京都医療センター

循環器内科

循環器内科

心臓カテーテル室

心臓カテーテル室

心臓は、直接見ることが出来ません。そのかわりに、心臓カテーテル室で透視(X線)を用いて心臓や血管を評価します。さらに利点として、血管を経路として用いて、大きな傷をつけずに心臓や血管の治療を行うことも可能です。

はじめに

はじめに

このホームページをご覧の皆さま、心臓カテーテル検査室とは何をするところかご存じでしょうか?ご存じかもしれませんが、心臓カテーテル検査室は、急性心筋梗塞の患者さんの緊急検査や治療をしたり、血圧が低下したり不整脈が続く患者さんに心臓や肺の働きを助ける補助循環を入れたり、狭心症や不整脈の患者さんの検査や治療をしたりと(その他にもまだまだたくさんあります)、心臓の病気の診断や治療で非常に重要な役割を担っている場所です。

対象となる病気について

心臓カテーテル室で検査や治療を行う病気のことについて、簡単に説明致します。

狭心症・心筋梗塞

心臓の血管が狭くなったり、つまったりして起こります。

狭心症・心筋梗塞について

末梢動脈疾患(閉塞性動脈硬化症)

足の血管が狭くなったり、つまったりして起こります。

末梢動脈疾患(閉塞性動脈硬化症)について

心臓カテーテルの概要

心臓カテーテル検査室というと怖いイメージがあるかもしれませんが、検査や治療中に痛みを感じることは実際のところはあまりありません。何よりも熟練したスタッフが十分な準備の上で検査や治療を行うわけですから、その点では安心して検査や治療を受けてください。心臓カテーテル検査(CAG)・心臓カテーテル治療(PCI)について詳しくは、以下のPDFをダウンロードしてご覧ください。

当院での検査・治療実績

ご覧頂いている皆様の中には、近い将来に心臓カテーテル検査や心臓カテーテル治療を予定されている方もおられることと思います。ここでもう少し当院の心臓カテーテル検査や治療の紹介をさせて頂きます。皆様の心臓カテーテル検査や心臓カテーテル治療に対する不安を減らし、また検査や治療を身近に感じて頂く、そのお手伝いとなれば幸いです。
心臓カテーテル検査や治療は、心臓カテーテル室で行います。心臓カテーテル検査や治療は放射線を用いますので、心臓カテーテル室は他の部屋に放射線がもれないように隔離された部屋ですが、たくさんの機械が入りますのである程度の広さがあります。その部屋の中で、私たちは患者さんに安心して検査や治療を受けて頂けるように、最大限の努力をしています。そのための主な2つの柱は、“安全かつ正確な検査・治療”と、“患者さんにとって快適な検査・治療環境つくり”です。

安全かつ正確な検査・治療

当院での最近のデータを以下に示します。

2016年2017年2018年2019年
治療成績
PCI総数/手技成功315/314278/275256/254263/258
手技成功率99.7%98.9%99.2%98.1%
内訳
緊急例/手技成功65/6563/6362/6260/59
予定例/手技成功250/249215/212194/192203/199
慢性完全閉塞/手技成功19/1817/1512/1116/13
非慢性完全閉塞/手技成功296/296261/260244/243247/245
合併症
院内死亡(内緊急)5(4)3(3)3(3)6(6)
緊急手術(内緊急)0(0)0(0)1(1)0(0)
心筋梗塞(内緊急)2(1)1(0)0(0)0(0)
脳梗塞(内緊急)0(0)0(0)0(0)1(0)
冠動脈穿孔(内緊急)1(0)0(0)0(0)1(0)
輸血を要する出血(内緊急)0(0)1(1)2(1)0(0)

同じような診療規模の病院と比較すると、心臓カテーテル治療の症例数が少ないように見えるかもしれませんが、当院では必要性を十分に吟味したうえで治療を行っています。また緊急の場合は、VA-ECMO(PCPS)等の経皮的心肺補助等を要する重症患者さんに対しても積極的に治療を行っています。助かる方もおられれば、残念ながら救命できない方もおられ、一定数の院内死亡の方がおられます。
心臓カテーテル室では、医師だけではなく、看護師、放射線科技師、臨床工学技士とたくさんの職種の人たちが一緒に協力して働いています。当科では全職種のスタッフが集まって毎週金曜日の午後に1時間近くかけてカンファレンスを行い、翌週の検査や治療予定の患者さん全員の方針について一例ずつ打ち合わせを行っています。全職種のスタッフが集まってすべての症例を検討している病院は珍しいと思いますが、全スタッフが患者さんの情報を共有することにより、“安全かつ正確な検査・治療”が実現できると考えています。

患者さんにとって快適な検査・治療環境つくり

“患者さんにとって快適な検査・治療環境つくり”への取り組みとしては、とにかく短時間・少ない造影剤量・低被ばく量で検査および治療を終えるように努力しています。その検証のために、すべての症例の造影剤量と透視時間をカルテに記載するようにしています。そのほかに、検査室で音楽を流しています。ご希望のCD等を持参頂けましたら、検査中にそのCDを流します。また心臓の血管造影の検査結果や治療経過を写真にして、すべての患者さんに渡しています。どの血管にどのような病変があり、治療によってどのように広がったのか、患者さん自身にもぜひ理解して頂きたいと考えています。
当科では、検査が本当に必要なのか検討する目的で、外来で冠動脈CTや運動負荷心電図を行うこともあります。心臓の血管に狭いところがあっても、治療する必要がない場合もあります。本当に治療が必要なのか、外来でRIの検査や冠動脈CTに関しては京都市内では唯一のFFR-CTという高度な検査も行っています。多少時間がかかっても、必要な検査や治療のみを行うことの方が患者さんのメリットがずっと大きいと考えています。
新しくなった広くきれいな心臓カテーテル室で安全かつ正確な治療を行い、より快適な環境で皆様に検査や治療を受けて頂けるように、これからも引き続き努力してまいります。

心臓カテーテル検査と治療に関するよくあるご質問

患者さんや医療関係者の方々より頂く、心臓カテーテル検査と治療についてのご質問に回答します。

心臓カテーテル検査について

カテーテルとは何ですか?
医療用に用いられる細い管のことです。
カテーテル検査にはどの様な種類がありますか?
動脈にカテーテルを挿入し、心臓を栄養している血管(冠動脈といいます)を見る冠動脈造影検査や、心臓の動きを直接見る左心室造影検査があります。また、静脈にカテーテルを挿入し、心臓の機能を見る右心カテーテル検査といったものもあります。
カテーテルの検査は全身麻酔ですか?
局所麻酔で行います。会話も可能ですので、検査中何かありましたらいつでもおっしゃって下さい。
カテーテル検査の流れについて教えて下さい。
カテーテル検査室に入室し、検査台に仰向けになって頂きます。皮膚を消毒し、局所麻酔を行い、シースという鞘状の道具を動脈/静脈に挿入します。続いてシース経由でカテーテルを血管内に入れます。造影剤というレントゲンで写る薬剤をカテーテルから血管に注入し、冠動脈や左心室をうつします。
カテーテル(シース)はどこから入れますか?
動脈にカテーテルを入れる場合は、鼠径部・肘・手首の3通りあります。静脈にカテーテルを入れる場合は鼠径部に入れる場合が多いです。患者様の状態に合わせて、入れる部位を検討しています。
カテーテルの検査はどれくらい時間がかかりますか?
約30分程度です。患者さんの血管の状態や行う検査によって、もう少し時間がかかる場合もあります。
検査前後の飲水・食事について教えて下さい。
造影剤で嘔気を生じることもありますので、検査直前の食事は絶食としております。検査終了後は食事を召し上がって頂いて構いません。水分に関しては、特に制限はありません。
検査の後に動くことは出来ますか? 安静が必要ですか?
肘や手首からの検査であれば、検査後から動くことは可能です。鼠径部からの検査であれば、検査後4~5時間程度のベッド上安静が必要になります。
何日間の入院になりますか?
1泊2日と2泊3日の2パターンあります。
1泊2日であれば、午前中に入院して頂き、入院当日に検査を行います。翌日の朝に問題無い事を確認し退院となります。
2泊3日であれば、午後から入院して頂き、入院翌日に検査を行います。入院翌々日の朝に問題ないことを確認し退院となります。
ご希望に合わせてどちらでも選択可能です。ただし腎臓の機能が低下している患者様は、造影剤による腎臓の障害を予防するために検査前日の夜から点滴が必要となるため、2泊3日の入院となります。
カテーテルの検査は怖いですか?
出血や血管損傷、脳梗塞などの合併症は多少なりともあります。ただし、カテーテルの検査で得られる情報はたくさんあります。当院では一例一例ごとに検査の必要性や方針を、カテーテル室に携わる全職種(医師、看護師、臨床工学技士、放射線科技師)が毎週集まってカンファレンスで検討しています。当院では年間1000例以上のカテーテル検査を行っており、患者さんに安心して検査を受けて頂けるよう努力しております。

心臓カテーテル治療について

カテーテル検査時と事前に準備などは異なるのでしょうか?
カテーテル検査時と比べて、治療の際には事前にお薬を開始したり、腎臓を守るために十分な点滴を行ったり少し違いはありますが、事前に患者様自身で準備頂くことに大きな違いはありません。
治療にはどの程度の時間がかかるのでしょうか?
それぞれの患者様により時間は異なるため、一概には言えませんが、目安としては1~2時間程度と考えればよいと思います。しかしながら、治療が大変なケースでは4時間以上にもなる場合もあります。事前に担当医にお尋ね頂くと大体の目安はお教え致しますのでお気軽にお尋ねください。
治療は痛いのでしょうか?
カテーテル検査と大きな違いがありませんので、カテーテル治療をするための管(シースといいます)が入るときには痛いですがそれ以外には、概ね痛みはありません。管は治療時には検査の時より太いものが入るので検査時よりは痛みが強いかもしれませんが、十分な局所麻酔を行いますのでご安心ください。また治療時に血管の中で風船を広げたりしている間に、普段感じる症状(胸痛など)を感じることがあるかもしれませんが、治療を行いながら症状を確認し、風船の広がりを調整できますので、胸痛が強いときはすぐにおっしゃって下さい。
治療した後にはどれくらい安静にするのでしょうか?
手から管を入れた場合と、足から管を入れた場合とで異なります。手から管を入れた場合には検査時と同じくお部屋に帰った後からトイレに歩いたりすることができます。足から管を入れた場合には、当院では通常血を止めるのに特殊な器具を用います。その場合には4時間のみの安静です。しかし、患者様によってはその器具を使えない場合もあります。その際には手で押さえて止血しますので、術後8時間ほどの安静が必要となります。
手から管を入れて治療をお願いすることはできますか?
患者様の負担を考えれば、手から管を入れた方が術後は楽なので、手からの治療が可能なケースでは、当院ではできるだけ手からの治療とし、患者様の負担が少ないようにしています。しかしながら、手からの治療では治療が難しいケースなどでは安全第一には行えない場合もありますので、担当医が安全を優先した選択をさせて頂いています。ご希望などがあれば、適宜担当医にお気軽にご質問ください。
入院の期間はどれくらいでしょうか?
治療をした翌日に採血や心電図の検査を行い、管を入れた部位が問題ないことを確認できれば、翌々日に退院となります。治療前日に入院であれば3泊4日、治療当日の入院であれば2泊3日となります。
治療の成功率や合併症の頻度はどれくらいなのでしょうか?
患者様により治療の難しさの度合いが異なりますので一概には言えない部分もあります。治療を行う前には、必ず治療の説明を一通り行いますので、その際にご説明させて頂きます。当院での一般的な成績はホームページをご参照下さい。
無事治療終了したら、それでもう検査などは不要なのでしょうか?
無事治療成功した患者様の多くの方は、その後問題なく過ごされますが、一部の方は再狭窄(さいきょうさく)といって、治療した部分がまた狭くなる場合があります。再狭窄が起こっていないか、確認するため当院では治療後8ヶ月後程度を目安に治療を受けた患者様には再度カテーテル検査を行い、問題ないか確認を行っています。(治療の種類・部位によっては異なる場合もございますので適宜担当医にご確認ください)。
治療後に気をつけることはあるのでしょうか?
無事終了した場合には日常生活にて特に気をつけることはございませんが、もともとお持ちの持病の高血圧・糖尿病・脂質異常症などの治療を引続きしっかりと行っていくことが重要となりますし、喫煙されている方は必ず禁煙するようにお願い致します。血をサラサラにする薬(バイアスピリンやプラビックス、パナルジンなど)は必要不可欠であり、必ず担当医の指示に従い内服してください。

当院における研究内容

当院における心臓カテーテルに関する研究内容の詳細をご案内します。

詳しくはこちら


このページは、心臓カテーテル検査室とは何をするところかを理解する、その助けになったでしょうか?
ご不明な点がございましたら、お手数ですが阿部までメール(abe.mitsuru.ft(at)mail.hosp.go.jp ※(at)を”@”に変更して送信してください。)でお気軽にお問い合わせください。

部門責任者:阿部 充/医長・カテ室チーフ