京都医療センター

循環器内科

治験・臨床研究

研究内容

当科ではつねに多くの臨床研究や、新しい薬剤や医療機器の治験をおこなっており、より有効性・安全性の高い医療を求めて積極的に研究活動を行っています。
当科では現在、以下に該当する患者さんについて、より良い治療を行うための調査を行っています。

伏見心房細動患者登録研究

高齢化にともない、心房細動の患者さんの数は年々増え続けています。各界の著名人が、心房細動から脳梗塞を起こされたことも大きく報道され、社会の注目も増してきました。2011年より、伏見区を中心とした京都南部地域における心房細動患者さんを登録し、患者背景や治療の実態調査、予後追跡を行う調査(伏見心房細動患者登録研究: Fushimi AF registry)を開始しました。これにより、治療効果や安全性を正確に把握し、伏見区の脳梗塞患者をひとりでも減らしたいと考えています。
このプロジェクトは、伏見医師会、医仁会武田総合病院と共同で行い、伏見区の心房細動患者さんをできるだけ漏れなく登録することを目指しています。
なお、この調査研究は、2012年6月6日付けの京都新聞でも取り上げられました。
担当:赤尾昌治

伏見心房細動患者登録研究について詳しくはこちら

心臓カテーテル検査・治療に関する研究

当科では、質の高い臨床を行うためには、質の高い臨床研究での検証が不可欠であると考えています。したがって、診療の質を上げるために心臓カテーテル検査及び治療に関する臨床研究に積極的に取り組んでいます。
具体的には、造影剤による腎臓障害の検討、薬剤溶出性ステントどうしの比較、ステント留置時の抗血小板剤2剤併用期間の検討、血管内超音波所見と患者さんの予後との関連をみる研究等を実施しています。
ご協力いただく患者さんにはあらかじめ説明文書を用いて詳細に説明を行い、そのうえで同意書で意思確認を行います。これらの分野は我々が関心を持ち、また得意とするテーマであり、これらの領域を含めてすべての分野で“安全かつ正確な検査・治療”が提供できるように努力してまいります。
以下に代表的な研究業績を掲載します。これらの中には、世界的に高く評価されている論文が多数あります。

担当:阿部 充、藤野 明子

発表論文

  1. Abe M, Akao M, et al. Current status of percutaneous coronary intervention in patients with atrial fibrillation: The Fushimi AF Registry. J Cardiol. 2019 Nov 3. pii: S0914-5087(19)30313-2. doi: 10.1016/j.jjcc.2019.09.014. [Epub ahead of print]
  2. Abe M, Kimura T, et al. Association between J-CTO score and long-term target lesion revascularization rate after successful chronic total coronary occlusion angioplasty (from the J-CTO Registry). Catheter Cardiovasc Interv. 2019 May 1;93(6):1025-1032. doi: 10.1002/ccd.28104. Epub 2019 Feb 5.
  3. Fujino A, Maehara A, Généreux P, et al. Significant association among residual SYNTAX score, non-culprit major adverse cardiac events, and greyscale and virtual histology intravascular ultrasound findings: a substudy from the PROSPECT study. EuroIntervention. 2019;14:1676-1684.
  4. Fujino A, Hao H, et al. Atherosclerotic Plaque Component As a Risk for Distal Embolization during Percutaneous Coronary Intervention; Pathological Assessment of Tissue Obtained by Distal Protection Device. Circ J. 2018;82:2292-2298.
  5. Fujino A, Mintz GS, Maehara A, et al. Predictors of Calcium Fracture derived from Balloon Angioplasty and Its Effect on Stent Expansion Assessed by Optical Coherence Tomography. JACC Cardiovasc Interv. 2018;11:1015-1017.
  6. Fujino A, Mintz GS, Maehara A, et al. A new optical coherence tomography-based calcium scoring system to predict stent under-expansion.
    EuroIntervention 2018;13:e2182-e2189.
  7. Fujino A, Otsuji S, et al. Accuracy of J-CTO Score Derived From Computed Tomography Versus Angiography to Predict Successful Percutaneous Coronary Intervention.
    JACC Cardiovasc Imaging 2018;11:209-217.
  8. Abe M, Akao M, Kimura T, et al. Impact of Transient or Persistent Contrast-induced Nephropathy on Long-term Mortality After Elective Percutaneous Coronary Intervention. Am J Cardiol. 2017 Dec 15;120(12):2146-2153. doi: 10.1016/j.amjcard.2017.08.036. Epub 2017 Sep 19.
  9. Abe M, Morimoto T, Akao M, et al. Relation of Contrast-Induced Nephropathy to Long-Term Mortality After Percutaneous Coronary Intervention. Am J Cardiol. 2014 Aug 1;114(3):362-8.
  10. Morino Y, Abe M, et al. Predicting Successful Guide Wire Crossing Through Chronic Total Occlusion of Native Coronary Lesions within 30 Minutes: the J-CTO Score as a Difficulty Grading and Time Assessment Tool. JACC Cardiovasc Interv. 2011 Feb;4(2):213-21.
  11. Abe M, Kimura T, et al. Sirolimus-Eluting Stent versus Balloon Angioplasty for Sirolimus-Eluting Stent Restenosis: Insights from the j-Cypher Registry. Circulation. 2010 Jul 6;122(1):42-51.
  12. Abe M, Kimura T, et al. Incidence of and risk factors for contrast-induced nephropathy after cardiac catheterization in Japanese patients. Circ J. 2009 Aug;73(8):1518-22.

全身麻酔手術における周術期心血管合併症の実態調査

全身麻酔手術において、出来るだけ合併症を起こさずに適切な治療が出来るよう、手術担当科の医師・麻酔科医師は細心の注意を払い治療にあたっています。それでも、リスクの高い患者さんやリスクの高い手術においては、周術期合併症として心筋梗塞や心不全、それに伴う死亡も報告されております。 当院では、出来るだけ心血管リスクの高い患者さんを術前から把握し、術中・術後の合併症を減らすことを目的として、

  1. 術前循環器外来を設置し、心疾患が疑われる患者さん・リスクの高い患者さんが循環器内科を術前に受診するシステムの整備
  2. 全身麻酔を受けられる45歳以上の患者さんの術後の採血・心電図を確認し、心臓の合併症の早期発見・早期治療に生かす態勢の整備

を行いました。その中で、術前・術後の患者さんの診療情報をまとめ、周術期心血管合併症の減少を目指していきます。

担当:石井 充、鵜木 崇

静脈血栓塞栓症における下大静脈フィルター使用の実態調査

近年、食生活の欧米化や急速な高齢化社会を迎え、以前は日本では頻度が少ないと考えられていた静脈血管に血の塊ができる病気である「静脈血栓塞栓症」が増加しています。一般的に「エコノミークラス症候群」等として、長時間の同一姿勢の保持により足の静脈血管に血の塊ができる「深部静脈血栓症」が知られていますが、その血の塊が肺の血管に飛散すると「肺塞栓症」と呼ばれる命に関わる重篤な病気を発症します。肺塞栓症を予防するために下大静脈と呼ばれる、お腹にある大きな血管に血の塊が飛ぶのを防ぐ傘である「下大静脈フィルター」という治療器具を挿入する治療方法があります。しかしながら、現在どういった患者さんにそのような治療を行っていくべきか、現代の医学ではまだまだ未知な部分があります。当院では、過去に静脈血栓塞栓症を発症した患者様の治療方針などをデータとしてまとめ、使用実態を調査することにより、治療効果や安全性を正確に把握し、今後の医療の発展に繋げたいと考えています。

担当 山下 侑吾、鵜木 崇

心筋梗塞の診断における高感度トロポニンIの有用性に関する研究

突然の胸痛や冷や汗といった心筋梗塞を疑わせる症状に対して、我々は様々な方法を用いて診断を進めていきます。従来当院では心臓の筋肉が傷害を受けた際に流出する酵素であるトロポニンTを測定するキットを診断の補助検査として用いてきました。このキットは発症から3時間以内では感度55.2%、特異度95.8%ととても優れた検査方法でありますが、腎機能が低下している方で偽陽性となってしまったり、陰性だからといって必ずしも心筋梗塞を除外できない点が弱点としてありました。そこで当院では2013年7月から、同じく心臓の筋肉の酵素であるトロポニンIを高い感度で測定する方法を導入し、心筋梗塞や狭心症の診断に用いております。このように検査方法を改善したことで、より質の高い医療を提供できていると考えておりますが、現在、本邦においては高感度トロポニンI測定の有用性はまだまだデータ不足であり、トロポニンT測定キットとの比較も検討されてはおりません。そこで当院では高感度トロポニンIまたはトロポニンT測定キットを用いた方を対象に背景疾患や予後のデータをまとめ、比較調査することにより、その有用性を明らかにする検討を行っております。

担当 髙木 大輔、鵜木 崇


調査に該当する患者さんには担当医師からご連絡をさせて頂きます。また調査に関しては以下記述に基づいて実施しております。

  • これまでの診療記録を集計しますので、新たな質問や検査の必要はありません。
  • お名前や個人情報がでることは、一切ありません。
  • 調査へのご自分の診療記録の使用をお断りになっても、不利益を受けることは全くありません。
  • 調査にご自分の診療記録を使ってほしくない方は、いつでもお申し出ください。