京都医療センター

泌尿器科

診療内容

主に以下の疾患について取り扱っています。

前立腺肥大症

前立腺とは

前立腺は男性だけにある臓器で、膀胱のすぐ下にあり、尿道をぐるりと取り囲んでいます。前立腺は精液の一部を作っており、膀胱の出口を開閉することで排尿や射精の調整を行っています。正常な前立腺の大きさはクルミ大ほどで、内側の内腺とその周囲の外腺で構成されています。

前立腺肥大症とは

前立腺肥大症は、前立腺の内腺部分が肥大することにより、尿道や膀胱を圧迫して、下記のような様々な排尿に関する症状を起こす病気です。前立腺肥大症は良性の前立腺結節の肥大であり、がんとは別の病気です。しかし、前立腺がんも非常に多い病気であり、前立腺肥大症と合併することがあります。また、前立腺肥大症でもPSA(前立腺がんのスクリーニングで使用されるマーカー)が高くなることがありますので、前立腺がんが疑われる時には追加の検査が必要になります。前立腺肥大症は男性ホルモンに関係するとされており、加齢と共にホルモン環境の変化が起こり、前立腺結節が肥大すると考えられています。

前立腺肥大症の症状
尿線途絶
尿をしている間に尿が途切れる
尿勢低下
尿の勢いが弱い
腹圧排尿
排尿時にお腹に力を入れる必要がある
頻尿  :
尿をしてから2時間以内に尿がしたくなる
夜間頻尿
夜間に尿意で何度も目が覚める
尿意切迫
急な尿意で尿を我慢できない
残尿感 :
尿をした後も尿が残っている感じがある
  • 国際前立腺症状スコア(International Prostate Symptom Score: IPSS)は、前立腺肥大症の症状の重症度を判断する際に役立つ指標です
  • 過活動膀胱スコア(Overactive Bladder Symptom Score: OABSS)は、尿意切迫を中心とした症状の重症度を判断する際に役立つ指標です

上記の排尿チェックシートを使用することで症状を数字的に評価できます。治療経過中も随時評価を行うことで、QOL(生活の質)の改善に役立ちます。

前立腺肥大症の治療
薬物療法
  • α1遮断薬
    前立腺や尿道の筋肉を緩めることで、尿を出しやすくする薬です。
  • 5α還元酵素阻害剤
    男性ホルモンを減らすことで、肥大した前立腺を小さくする薬です。内服することでPSA値が減少しますので、注意が必要です。
手術療法
  • 経尿道的前立腺切除術(TURP)
    前立腺を内側からループ状の電気メスで削り取る手術です。従来行われている標準的な治療です。
  • 経尿道的前立腺核出術(TUEB、HoLEP)
    前立腺内腺のみを核出し(くり抜き)、膀胱の中で細切りにして体外に取り出す手術です。
  • 光選択的前立腺レーザー蒸散術(PVP)

前立腺肥大症治療のための最新レーザ導入のお知らせ
~京都府初の最新機種導入によって、患者様の更なる負担軽減とQOLに貢献~

京都医療センターは、京都府下初となる、最新機種GreenLight XPSを導入しましたのでお知らせいたします。
当院では、2011年11月より、前立腺肥大症治療のための、GreenLight HPSを用いたPVP(光選択的前立腺レーザー蒸散術)を開始して、現在約700例に対し安全で確実な治療を実践してまいりました。この治療法は、従来から行われている一般的な手術療法と比べ、出血が少ない、術後のカテ-テル留置や入院期間が短いなど、身体への負担が少ない画期的な治療方法です。
このたび、2021年3月最新機種導入によって手術効率・止血機能が大幅に向上した結果、より安全でスピーディーな治療を患者様に提供することが可能になりました。

GreenLight XPSについて

本レーザシステムは高出力のレーザ発生装置(コンソール)と専用のレーザガイド用プローブ(ファイバー)から構成され、前立腺肥大症の治療に対する外科的治療の1つであるPVPを行うことができます。
PVPでは、内視鏡(膀胱鏡)を用いて経尿道的に肥大した前立腺へアプローチし、高出力緑色可視レーザ光を照射して、肥大により尿道を圧迫している前立腺組織を加熱・蒸散させることで尿路のつまり(閉塞)を取り除きます。
PVPに用いる532nmの緑色可視レーザ光は血液中のヘモグロビンに選択的に吸収され、効率的に肥大した前立腺の腺腫を蒸散させることができるため、PVPは出血のリスクが少なく、抗凝固剤使用下においても服薬を休止等せずに安全に施行することが可能です*1(日本泌尿器科学会ガイドライン:推奨グレードA)。

前立腺肥大症について

前立腺体積は加齢に従って増加し、組織学的な前立腺の肥大は80歳代では約90%にみられます。
前立腺肥大症(BPH)は、前立腺の良性過形成による下部尿路機能障害を呈する疾患で、通常は前立腺腫大と膀胱出口部閉塞を示唆する下部尿路症状(夜間頻尿、昼間頻尿、尿勢低下、残尿感、尿意切迫感など)を伴います*1
BPHの主な治療法には、薬物療法のほか、光選択的前立腺レーザ蒸散術(PVP)、経尿道的前立腺切除術(TURP)、ホルミウムレーザ前立腺核出術(HoLEP)といった手術療法などがあります。

詳しくは泌尿器科担当医にご相談ください。

(出典)

  1. 男性下部尿路症状・前立腺肥大症診療ガイドライン(2017, 日本泌尿器科学会/編)
    写真提供:ボストン・サイエンティフィック ジャパン株式会社
入院後スケジュール

当院での治療成績

2011年11月の導入から2015年7月までに274名を超える方にPVPを施行しております。

PVP
年齢 平均 71.5 歳 (50~92歳 )
尿道カテーテル留置期間 1日 (翌日抜去)
入院期間 4~5日

  • 自覚症状の指標であるIPSS(国際前立腺スコア)、QOLスコアは術前と比較し術後1カ月目より改善を認め、2年間が経過したのちも改善を維持しています

  • 他覚症状の指標である、最大尿流量(尿の勢い)、残尿量(排尿後膀胱に残っている尿) も術前と比較し術後1カ月より改善を認め、2年間が経過したのちも改善を維持しています。

PVP(光選択的前立腺レーザー蒸散術)に興味がございましたら、当院泌尿器科医師まで気軽にお尋ね下さい。

抗血栓療法をされている患者さんでも治療を継続しながら安全に行うことが出来ます。
詳しくは担当医にご相談ください。

男性更年期症

女性に更年期があるように、男性も50歳を過ぎると更年期を迎えます。極端な疲れやほてりを感じたり、記憶力・集中力の低下、性機能の減衰、なんとなく気分が落ち込むなど、なんともいえない不快な症状に悩まされることはありませんか?  これは男性ホルモンの一種、アンドロゲンが加齢に伴って減少することに起因すると考えられています。男性ホルモンはメンタル面への影響も大きく、これが“うつ”的な症状の原因ともなっている場合もあります。

日常生活の継続に不調・不安を覚えるような場合、お気軽に病院にご相談ください。当院では、男性ホルモンの分泌状況を調べると同時に、総合病院の良さを生かして、他科と連携してその方にあった最適な治療法をご提案します。たとえば、診療内科分野の比重が大きい方では精神科の診療が受けられます。薬を使った治療だけではなく、家族、同僚との人間関係や基本的生活習慣などを重視した、きめ細やかな診療を行っています。

治療法:

  • 問診(カウンセリング)
  • 男性ホルモン補充療法(注射、パッチ、軟膏、経口剤)
  • 男性更年期的症状に心当たりのある方は、男性更年期症状に関するアンケートをダウンロードして判定してみましょう。

    ※ 判断基準

    アンケートの上段の表
    設問1あるいは設問7が“はい”の場合、それ以外の8問中3問が“はい”の場合、男性更年期障害であると判定します。
    アンケート下段の表 :
    “ない”1点、“軽い”2点、“中等度”3点、“重い”4点、“非常に重い”5点とし、17~26点は正常、27~36点は軽度、37~49点は中等度、50点以上は重度と判定します。
  • 男性更年期に関して詳しくお知りになりたい方は、奥野医師の論文「男性更年期(medicina第42巻第7号 p1241-1247 医学書院2005.7.10)」をご覧ください。以下のリンクからご覧になれます。

尿路結石症

疫学

2005年の全国疫学調査によると尿路結石の発生率は急増しており、この10年間だけをみても1.5倍も増えています。また、男性15%・女性6%で一生涯に一度は尿路結石に罹患しています。しかも、5年再発率は約50%と高く、好発年齢は30~60歳と比較的若年者によく認められています。

結石再発の危険性が高いのは男性、多発と腎下極結石、若年での発症、結石の家族歴(慢性消化管疾患、尿路感染症、痛風、骨疾患など)、結石摘出後の合併症などであります。結石の成分としては、約90%が主にカルシウムで構成された結石でありますが、その他は尿酸結石・シスチン結石など様々な物質で構成されています。

尿路結石増加の要因

食生活や生活様式の欧米化によるコレステロールや動物性蛋白質の過剰摂取が指摘されております。また、メタボリックシンドロ-ムとの関連(メタボリックシンドロ-ムの発症を予知する警鐘)も指摘されております。近年では画像診断における診断率の向上、検診などによる無症状結石の発見も一つの要因と言われております。

尿路結石の原因

尿路結石の約60%は原因不明の突発性結石症であります。結石の原因疾患としては、尿路感染症、長期寝たきりの状態、痛風、遠位腎尿細管性アシドーシス、シスチン尿症、原発性副甲状腺亢進症によるホルモン産生によるものなどが挙げられます。

尿路結石の症状

検診などで指摘される結石は、無症状な場合が多い。しかし、結石によっては突然、尿路が閉塞し腎盂内圧が上昇することで激しく差し込むような腰背部から側腹部にかけて疼痛に襲われることもあります。また、血尿や嘔吐・悪心を伴うケースもあります。

尿路結石症の診断

自覚症状から尿路結石症を疑った場合は、尿検査、腹部レントゲンや腹部超音波検査を施行します。中には腹部レントゲンで写らない結石(尿酸結石・シスチン結石)の場合には腹部単純CT(コンピューター断層撮影)やIVP(経静脈性尿路造影検査)で診断します。

尿路結石の治療

結石による疼痛発作においては鎮痛剤(非ステロイド系消炎鎮痛剤・抗コリン剤)で様子をみます。また、結石の大きさ・位置によって治療方法が異なります。一般的には5mm程度の結石なら排石促進剤や鎮痛剤で自然排石を促します。結石の大きさが5mmを超える時には、結石の位置によりESWL(体外衝撃波破石術)、TUL(経尿道的結石破砕術)やPNL(経皮的腎破石術)を選択して外科的治療を行います。

外科的治療の遍歴

以前は観血的治療(開放手術)でありましたが、過去30年でESWL(体外衝撃波破石術)、さらに内視鏡治療(TUL・PNL)へ発展してきました。近年では特にTUL(経尿道的結石破砕術)においては、硬性尿管鏡に加えて軟性尿管鏡も用いられるようになりました。尿管鏡が太径から細径(7.5Fr以下)になり、結石破砕操作が容易になり治療成績の向上や合併症の減少に寄与しております。以前は尿管鏡では膀胱~中部尿管までしか結石破砕ができませんでしたが、軟性尿管鏡により上部尿管・腎盂まで結石破砕ができるようになりました。その他としては、周辺機器の開発発展(モニターがアナログからデジタル表示)により良好な視野が得られるようになりました。

当院では、尿路結石症に対しては内視鏡を用いた破石術を施行しております。内視鏡は軟性尿管鏡および硬性尿管鏡の2種類があり、破砕装置はレーザー装置およびリソクラスト破石装置で様々な結石に対応しております。2012年より最新のESWL(体外衝撃波破石術)も導入し、治療を開始しております。より広い範囲で尿路結石の加療に対応できるようになりました。

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体外衝撃波破石術(ESWL)

日本でもすでに多くの方々がこの治療を受けており、その安全性は広く確認されています。
体外衝撃波結石破砕術(ESWL)とは、放電によって衝撃波を発生させる装置を用いて衝撃波のエネルギーを体内の結石に目標を合わせ収束し衝撃波の力で体外から腎臓や尿管の結石を細かく砕く治療法です。衝撃波により砕石されて生じた破片は尿とともに自然に体外に排出されます。
尿路結石症の治療指針を記した「尿路結石症治療ガイドライン」の中でも、腎結石、尿管結石の治療としてESWLが推奨されており、現在多くの施設で破砕装置が設備されるようになっています。従来の開腹手術や内視鏡手術と同様に保険診療が認められています。

体外衝撃波結石破砕術(ESWL)は身体への負担が少ない点から尿路結石症の治療法の主役となっています。しかし、結石自体が割れにくい、結石が大きい場合は複数回のESWLが必要であり、経尿道的結石破砕術(TUL)内視鏡治療を併用しなければならない場合もあります。結石治療の方針を決める際には泌尿器科担当医とよくご相談ください。

当院で採用しているESWL(ソノリス アイリス)の特徴

EDAP TMS 独自のDIATRON IVジェネレーターにより、あらゆる状況、患者様に対応が可能となりました。

  • 焦点深度は170mm、肥満患者群への対応が可能
  • 下部尿管結石へも容易に到達
  • 開口部は291mmと広く、患者様の皮膚の痛みを大きく軽減
  • より大きなアコースティックウィンドに対応する衝撃波収束角度(80度)

近年のESWLテクノロジーに求められる特性は、その破砕力だけでなく、低い再治療率、高い完全排石率及びストーンストリートの回避が求められています。特許技術のソノリス アイシスに採用されるECLテクノロジーでは、高い破砕力を備え結石を容易に自然排石させる細かい破砕片にします。またあらゆる焦点サイズへの適応性というまさに最適なコンビネーションが実現されています。
下図は、モデル結石(下図)をテスト用水槽で破砕した後の破砕片です。電磁変換方式(図中)およびソノリス アイシス ECL方式(下図)を比較。ソノリス アイシスでは、より少ない衝撃波で微細な破砕片が得られることが明確に確認されました。

体外衝撃波破石術(ESWL)の適応

ほとんどすべての方で安全に治療できます。
しかし、以下の場合には原則的に治療は行いません。

  • 妊娠中または妊娠の可能性がある方
  • 閉経前の女性の下部尿管結石
  • 出血傾向のある方
  • 腎動脈瘤のある方

また治療の適応はありますが、尿管が狭く、長期間にわたって尿管結石が詰っていた場合には砕石に成功しても、そのままでは排石しない可能性があります。

極度の肥満の方や安静が保つ事ができない小児の場合、位置あわせが困難でこの場合は主に内視鏡治療が選択されます。

体外衝撃波破石術(ESWL)の治療とは
  • 開腹手術ではないので、身体に傷をつけません。
  • 麻酔の必要がありませんので、1泊2日入院による治療が可能です。(座薬または鎮痛剤を使用します)
  • 新しく開発された電極を使用しているため破砕効果が高く、治療時間が短縮されました。(1回の治療時間は約30~60分です)
  • 新しい衝撃発生器により痛みの少ない治療が可能となりました(常に医師や看護師が側に居て、痛みに対処します)
  • 治療には施行医師とともに、看護師が常駐し、心電図モニターや血圧・酸素モニターなどを常に監視し治療を行います。
体外衝撃波破石術(ESWL)の合併症について

その他、詳しいことは外来担当医にご相談下さい。

経尿道的結石破砕術(TUL)とは

腎結石、尿管結石などのほぼ全ての尿路結石が治療の対象になります。メリットとしては内視鏡で直接確認しながら、レーザーで結石を破砕・摘出でき根治を目指すことができます。TULは、軟性または硬性尿管鏡を尿管や腎まで挿入し、直接結石を確認しながら、レーザーを用いて破砕します。破砕された結石はバスケットカテーテル(結石をつかむ器具)で回収するため、安全かつ確実に破砕から摘出が可能です。 しかし、両側の尿路結石や大きな結石など1回で破砕・摘出できない場合、尿管狭窄で内視鏡が挿入できない場合などもあります。患者様の状態や希望に合わせた治療法を選択しています。
結石(嵌頓・停滞・癒着など)の影響や尿管内でレーザー照射や器具操作等による尿管浮腫が起こるため、術後に尿がスムーズに流れるように一定期間は尿管ステントと呼ばれる細い管を留置します。

手術は通常腰椎麻酔下で行い、麻酔を含めて約2~3時間です。入院期間は、約4~5日間です。術後には尿管に管を留置し、術後の状態にもよりますが約1~2週間で抜去します。

経尿道的結石破砕術(TUL)の合併症について

その他、詳しいことは外来担当医にご相談下さい。