診療内容
主に以下の疾患について取り扱っています。
腎盂尿管がん(上部尿路腫瘍)
腎盂尿管がんは、尿が腎臓から膀胱に送られる経路である腎盂や尿管にできるがんです。これは「上部尿路腫瘍」とも呼ばれ、進行すると他の臓器やリンパ節に広がるリスクがあります。
早期発見と適切な治療が重要であり、当院ではこの分野において最先端の治療を提供しています。
- 診断
腎盂尿管がんの診断には以下の方法が使われます。
- 画像検査
CT(コンピュータ断層撮影)やMRI(磁気共鳴画像法)を使って腫瘍の位置や大きさを調べます。 - 尿検査
肉眼的血尿が主な症状なので、検尿で尿中の赤血球の有無を調べます。尿中にがん細胞が含まれていないかを確認するための検査(尿細胞診)を行います。 - 内視鏡検査(膀胱鏡、尿管鏡検査)
膀胱がんを合併することも多く、膀胱内を観察する膀胱鏡検査は必須です。また尿管鏡を用いて腫瘍の直接観察や組織を採取し、病理検査でがんの種類や進行度を確認します。
これらの検査により、がんの進行具合や治療方針が決定されます。
- 画像検査
腎盂尿管がん(上部尿路腫瘍)の手術
腎盂尿管がんの治療には主に外科的治療が用いられます。当院は、日本でも有数の外科治療を行っており、標準治療に加え、腎温存療法など最先端の治療方法も提供しています。
- ロボット支援腎尿管全摘除術
- 腎臓と尿管を一体的に摘出する標準治療法です。これまで腹腔鏡で腎尿管全摘除術を施行していましたが、2024年11月にロボット(ダビンチXi)2台体制となり、ロボット手術に完全に移行しました。
ロボットを用いることで、より正確な操作が可能になり、周囲の組織を保護しながらがんを摘出できます。ロボット支援手術により、従来の手術よりも術後の回復が早く、合併症が少ない傾向にあります。 - リンパ節郭清
- がんがリンパ節に転移することがあるため、当院ではリンパ節の詳細な切除(郭清)を積極的に行っています。
リンパ節郭清には再発防止や予後改善の可能性があり、エビデンスに基づいた治療効果が期待されています。ロボットによる腎尿管全摘除術や尿管部分切除術の際にロボット下にリンパ節郭清術を施行しています。 - 腎温存療法(尿管部分切除術)
- 腎機能をできるだけ温存しながら腫瘍だけを取り除く方法で、特に単腎やすでに腎機能障害を有するなど腎機能を温存したい患者さんに適した選択肢です。
この治療法は尿の通り道を再建する必要があるため技術的に高度で、ロボット支援を用いることでさらに精密な手術が可能となります。
腎盂尿管がんの薬物治療(転移を有する場合や手術と組み合わせて行う場合)
腎盂尿管がんの治療において、転移が確認された場合や、がんが進行している場合には、手術のみならず薬物療法(化学療法や免疫療法)が行われます。
腎盂尿管がんが進行して転移が認められる場合、あるいは外科的な治療だけでは不十分と考えられ、薬物療法との組み合わせが必要と思われる場合、以下の薬物療法が考慮されます。
- 化学療法
- 化学療法は、腫瘍が全身に広がっている場合や、手術だけでは取り除けない場合に使用される治療法です。
抗がん剤を使ってがん細胞の増殖を抑えることができ、特に膀胱がんで使われるシスプラチンベースのレジメン(GC療法;ゲムシタビン+シスプラチン)が適用される場合があります。術後の再発リスクを下げるために行われることもあり、患者さんの状態やがんの進行度に応じて治療計画が立てられます。 - 免疫チェックポイント阻害剤
- がんの免疫療法として注目されている治療法で、体の免疫細胞ががん細胞を効果的に攻撃できるようにする薬です。
具体的には、免疫チェックポイント阻害剤(PD-1阻害剤やPD-L1阻害剤など)が使われ、転移や再発を防ぐための補助療法として利用されます。化学療法で十分な効果が得られない場合や、副作用が強い場合の代替としても検討されます。 - エンホルツマブ・ベドチン(パドセブ)
- エンホルツマブ・ベドチンは、進行や転移がある尿路がんの治療に使われる新しいタイプの薬で、がんが進行している方にとって新しい治療の選択肢です。
この薬は、がん細胞だけを狙い撃ちして、がん細胞の中に抗がん剤を届ける仕組みになっています。- どのように働くのか?
エンホルツマブ・ベドチンは、がん細胞に多く見られる「ネクチン-4」という目印を見つけ、がん細胞の中に薬を運んで攻撃します。このため、がん細胞を効率よく攻撃しながら、健康な細胞にはあまり影響を与えにくいのが特徴です。 - 効果とメリット
がん細胞をピンポイントで攻撃するため、従来の化学療法よりも、健康な細胞へのダメージが少ない可能性があります。副作用は抗癌剤に比べ少ないですが、皮膚の発疹やしびれなどの副作用が出ることがあります。
- どのように働くのか?
腎盂尿管がんの治療での当院の特色
当院は、腎盂尿管がんに対する外科治療の水準が非常に高く、ロボット手術、リンパ節郭清術、腎温存手術に力を入れています。これにより、国内トップクラスの治療成績を誇り、腎盂尿管がんの早期から進行した状態まで患者さんの状況に応じた最適な治療を提供しています。また我々は腎盂尿管がんの治療法につき、これまでに様々な治療エビデンスを発信しています。多職種を含めた専門的なチームが患者さん一人ひとりに合わせた治療を行います。
このように、腎盂尿管がんに対して多様な治療法があり、患者さんの病状や体力に応じて最適な方法を選択することが可能です。質問や不安な点がありましたら、どうぞお気軽にご相談ください。