京都医療センター

外科

鼠径ヘルニア

鼠径ヘルニア(ソケイヘルニア)

鼠径(ソケイ)は太ももの付け根の部分、ヘルニアは体の一部が突出することをいいます。太ももの付け根に腸が飛び出して、丸くふくれる症状をソケイヘルニアと呼びます。
成人のソケイヘルニアは、ソケイ(太もものつけ根)の腹壁の弱くなった部分から腹膜が突出して「ヘルニアのう」と呼ばれる袋ができ、その中に腸などが脱出してくる病気です。脱出した内容物が戻らなくなることを嵌頓(かんとん)といい、痛みを伴ったり、腸閉塞になって嘔吐したりします。嵌頓したままだと腸管の壊死が起きてしまうため、早急な処置が必要です。

小児の場合は、すべて先天的なもので、胎児期に精巣下降に伴って腹膜鞘状突起が出来ますが、これが開存したままである場合にここから腸などが脱出して鼠径ヘルニアとなります。全体の嵌屯率は7%程度です。男子の鼠径ヘルニア嵌屯の合併症としては腸管壊死ととともに精巣の虚血性壊死が、女児では、新生児期・乳児早期には、腸管以外に卵巣の脱出が起こり得ます。

1歳以下の小児では自然治癒することもありますが、基本的には手術をしないと治りません。成人の場合には、痛みなどの症状がなく、鼠径ヘルニアがそれほど気にならず、はみ出した腹膜や腸を手で腹腔内に押し戻すことができているのであれば、時々診察を受けて様子を見ていてもかまわないかもしれません。ただし、自分で押し戻しにくくなってきたり、腹圧がかかりやすい環境にあったりする場合は、ヘルニアが「かんとん」してしまって、腸閉塞を起こす恐れがあるので、手術をした方がよいでしょう。

●手術
腸が入り込んでいたヘルニアのうを切除する方法と、合成繊維でできた専用の布で筋膜の弱いところをおおって補強する方法があります。小児の場合は前者の方法で行われますが(ポッツ法)、成人の場合はどちらかと言えば後者の方法で行われることが多くなっています。
麻酔は、成人の場合は腰椎麻酔か局所麻酔で行われますが、小児の場合は全身麻酔が必要になります。
一般的に術後の痛みは軽度で痛み止めの内服で十分収まりますので、翌日にでも退院が可能です。抜糸が必要な場合は外来で抜糸をすることになります。
以前の手術方法では、10%に及んだ再発率も、現在の手術方法では5%以下と言われるようになりました。