外科

食道がん

はじめに

食道がんは近年、手術治療と放射線化学療法の治療成績が近似しており、治療法の選択が可能になりました。当院では、がんの進行度によって手術療法、内視鏡治療(がんが粘膜にとどまる場合は内視鏡的粘膜切除術(EMR)を行います )、化学療法、放射線療法から、症例に最適と思われる治療の組み合わせを提案しています。
また、リンバ節転移例や他臓器浸潤疑い例には、術前化学療法を積極的に行って予後の改善を目指しています。当院の年間手術件数は、10~15例です。

“食道がん”とは、どんな病気ですか?
  1. まず、食道とは?

    食道はのどと胃の間をつなぐ消化管で、食べた食物を口から胃に送る働きをしており、消化機能はなく、頸部から腹部にまたがる 25cm ぐらいの管状の臓器です。食道の大部分は胸の中で、一部は首と腹部にあります。

    食道がん取り扱い規約では、がんの占居部位を表すのに、食道を、1)頸部食道、2)胸部上部食道、3)胸部中部食道、4)胸部下部食道、5)腹部食道、に区分しています。食道周囲には胸部では気管、心臓、大動脈、肺などがあります。

    食道壁は、内側から粘膜、粘膜下層、筋層、外膜の4つの層に分かれています。さらに粘膜は、上皮、粘膜固有層、粘膜筋板の3層からなっています。

  2. 食道がんとは?

    早期のものは、健康診断や人間ドックの時に内視鏡検査などで偶然発見されることが多く、無症状です。進行すると食物がつかえる感じがあり、嚥下困難を感じます。体重減少や声がかすれることで発見されることもあります。

    食道がんは、食道粘膜から発生し、食道の中 1/3 か下 1/3 に最も多く発生します。食道の上皮は扁平上皮でできており、食道がんの 90 %以上が扁平上皮がんです。がんが進行すると、食道の壁を貫いて周囲臓器(気管・気管支、肺、大動脈、心臓)へ拡がります。
    また、食道壁および周囲にはリンパ管や血管が豊富で、がんはリンパ液や血液の流れに入り込んで、食道のまわりのリンパ節や腹部や首のリンパ節や肝臓、肺、骨などに転移することがあります。

    食道がんの危険因子として、飲酒、喫煙や遺伝的要因(血縁にがんがいる方)などがあります。食道がんにかかる方は口腔、咽頭、喉頭などにもがんができやすく、逆に口腔、咽頭、喉頭などのがんにかかると食道にもがんができやすいなど、相互に関連し合っています。

診断

食道がんの診断方法には、一般に X 線による食道造影検査と内視鏡検査があります。その他、がんの進行度を見るために CT 、 MRI 検査、内視鏡超音波検査、超音波検査、 PET などを行います。

進行度(ステージ)

食道がんの進行の程度は、日本食道疾患研究会の「食道癌取扱い規約」に基づいた進行度分類に基づいて行っています。
病期は3つの因子の組み合わせで表されます。がんの深さはT因子、リンパ節転移はN因子、他の臓器への転移はM因子となります。また、がんの到達度(T因子)はさらにm因子でさらに細かく分類されています。

がんの深達度(T) リンパ節転移(N) 他臓器への転移(M)
0期 Tis m1 N0 M0
Tis m2 N0 M0
T1a m3 N0 M0
Ⅰ期 T1b N0 M0
Ⅱ期 T2~T3 N0~N1 M0
Ⅲ期 T3~T4 N1 M0
Ⅳa期 すべてのT すべてのN M0
Ⅳb期 すべてのT すべてのN M1

※ 0期のm分類の目安 : m1=がん腫が粘膜内にとどまる、m2=がん腫が粘膜固有筋層内にとどまる、m3~sm1=がん腫が粘膜筋板にとどまる、sm2~sm3=がん腫が粘膜下層にとどまる

治療法

がんの進行度とがんの部位、全身状態などから、治療法を決めます。

食道がんの治療は大きく分けて、4つの治療法(内視鏡治療、手術、放射線治療、化学療法(抗がん剤))があります。進行したがんでは、外科療法、放射線療法、化学療法を組み合わせた集学的治療も行われます。
また、進行度(ステージ)により治療法が異なります。

【進行度別(ステージ別)治療】

治療法は、「食道癌治療ガイドライン」に基づき、進行度(深達度、リンパ節転移、臓器転移)、癌の部位、全身状態(心肺機能等)などにより、決めます。

0期( Tis , T1a & N0 , M0 )
上皮内癌Tis(m1)あるいは粘膜固有層(m2)にとどまるがんは、内視鏡的粘膜切除(EMR)の適応です。ただ、食道の広い範囲にある場合や内視鏡的粘膜切除が無理な場合は外科手術や放射線治療になりますが、放射線治療の場合、切除されないため、組織結果がわからない欠点があります。粘膜筋板に達するT1a(m3)になりますと、約10%にリンパ節転移を認めるため、内視鏡的粘膜切除では不十分な場合(リンパ節転移があった場合)があります。この場合、内視鏡的切除後経過観察、もしくは、手術、放射線治療となります。
I 期、II 期、III 期(III 期の中で T4 、 N0 除く)
次の治療のいずれかが選択されます。
手術療法
放射線化学療法(放射線療法と抗がん剤の同時併用療法)
手術療法が標準治療ですが、手術不能例に対しては、放射線化学療法を行います。
近年、放射線化学療法により、手術と同等の治癒率が得られるという報告もあります。
放射線療法(外科手術や放射線化学療法が適切でない場合:体力が十分でないなど)

III期(III期の中で T4 、 N0 の場合)
手術療法:合併切除(肺など)が可能なら外科手術の適応となりますが、気管や大動脈など合併切除が困難な場合は、術前放射線化学療法を行います。
効果があれば、外科的切除も考慮されます。
放射線化学療法
放射線療法
IV a 期
T1 ~ T3 でリンパ節転移が広範囲( N4 )にある場合、次の治療のいずれかが選択されます。
化学療法:効果があれば、がんの縮小を認めるが、治癒は困難です。
放射線化学療法:通過障害が強い場合など放射線治療を併用します。
放射線療法(化学療法が適切でない場合)
手術:一般的には手術を行いませんが、化学療法を行って効果があれば、症例により外科的手術を行います。
IVb期
肝転移や肺転移などの遠隔転移のある場合は、通常、化学療法を行います。

外科手術

手術は、食道がんに対する最も一般的な治療法です。その方法は、がんを含めて食道を切除し、食事の通る新しい道を再建(再建臓器としては、胃が主)します。手術治療では、がんの存在部位(頸部、胸部、腹部に分かれる)により、手術法が異なります。
頸部に限局する食道がんは、頸部食道切除、遊離空腸再建を施行しており、耳鼻科で行っています。
胸部の場合は、原則は胸部食道全摘し、胃を食道の様に細くし、頸部にて食道と胃を吻合します(胃が使えない場合、大腸や小腸を使います)。また、リンパ節転移が、頸部、胸部、腹部のリンパ節にわたる場合、リンパ節郭清を行っています(3領域郭清)。ただ、この郭清(3領域郭清)を行うと、術後合併症(反回神麻痺、術後肺炎等)の頻度が増加します。そのため機能温存も重視して、症例によっては術前の詳細な検査( CT 、超音波内視鏡、 PET 等)を参考に、上縦隔のリンパ節郭清を控えたりすることがあります(例えば、早期胸部食道がんや胸部下部食道がんで上縦隔、頸部リンパ節に転移のない症例)。症例によっては、頸部操作を加えず、胸部食道を亜全摘し、胸腔内吻合を施行しており、この場合術後の回復も早いです。また、最近では、内視鏡手術(胸腔鏡、腹腔鏡補助下)も積極的に行っています。
腹部食道に限局する場合は、症例により開腹操作のみ、もしくは開胸開腹により、行っています。

外科手術の合併症

外科手術の合併症は肺炎( 20 %前後)、縫合不全(吻合不全)(20%前後)、反回神経麻痺(15%前後)などがあり、そのほか、不整脈、肝障害などがあります。また術前に合併症(糖尿病や肺機能低下など)のある場合、さらに合併症の頻度が高くなります。手術死亡率(手術後1ヶ月以内に死亡する割合)は2%前後です。

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