京都医療センター

外科

大腸がん

手術症例

当院は京都府内では数少ない大腸肛門病学会認定施設であり、大腸がんの専門医が中心となってチームで治療にあたっています。
年間の大腸がん手術件数(内視鏡的切除や再発手術、ストマ閉鎖などは含まず)は概ね140-180例で推移しております。これは京都府下ではトップクラスです。そのうち約80-90%に腹腔鏡下手術を行っております。

手術方針

早期がん、進行がんに関わらず、大腸の全領域(盲腸、上行結腸、横行結腸、下行結腸、S状結腸、上部直腸、下部直腸、肛門)に対して、ほとんどの症例で腹腔鏡下手術を選択しています。当院では内視鏡外科学会の内視鏡外科技術認定医(大腸領域)が2名おり、大腸がん手術は必ず技術認定医が担当・指導しています。

腹腔鏡下手術は身体への負担が少なく術後の回復が早いとされ、患者さんにとって多くの利点が認められています。しかし、がんの進行度によっては、腹腔鏡下手術では根治性がそこなわれたり、安全な手術が行えない場合があります。そのような場合は無理に腹腔鏡下手術を行わず、従来通りの開腹手術を選択しています。

直腸がんは進行すると周囲の骨盤内臓器(膀胱や前立腺、子宮、膣など)に浸潤します。このような高度進行直腸がんに対しては、当院の腫瘍内科・放射線科との連携のもと、術前化学療法(抗がん剤)や術前化学放射線療法(抗がん剤+放射線照射)を行い、臓器温存の可能性を広げるよう心がけています。しかし、臓器温存に固執しすぎると、がんに対する手術の本来の目的である、きれいにがんを取ることができなくなる(=がんが残る)危険性があります。従って、患者さんとよく相談の上、必要に応じて拡大手術(側方リンパ節廓清、大動脈周囲リンパ節廓清、(仙骨合併)骨盤内臓全摘術など)を行い、根治性を高めています。

ロボット支援下直腸がん手術について(ダヴィンチ手術)

ダヴィンチ手術は腹腔鏡下手術をロボット支援下に行うもので、従来の腹腔鏡下手術の利点をさらに向上させることができると考えられています。ロボットは多関節の鉗子を持ち、従来の腹腔鏡下手術ではやりにくい骨盤底の操作も、複雑で細やかな手術手技が可能となります。ロボットと言っても自動的に機械が動くものではなく、あくまで操作するのは人間です。
大腸がんの中では直腸がんのみ保険収載されており、従来の腹腔鏡下手術と比較して、患者さんの自己負担額に現時点では差はありません。(2019年10月時点)
すべての直腸がんに対してダヴィンチ手術を行っているわけではなく、患者さんそれぞれの病気の状況に合わせて適応を判断しております。

手術成績

手術成績向上のため、大腸がん手術治療において相反しうる以下の3要素を実現し、継続・発展させています。

  1. 根治性(解剖学に基づいたきれいな手術を行い、手術で治せるがんを治す)
  2. 安全性(低い合併症率・・・少ない術中出血、術後出血。低い縫合不全率。低い創部感染率)
  3. 機能温存(直腸がんにおける肛門温存、排尿機能、性機能温存)

この結果、当院では、全国平均と比較して術後合併症の発生は低く抑えられており、根治性も高い水準を維持しております。

入院期間

標準的な大腸がん切除手術では、手術の2-3日前に入院し、術後7-10日程度で退院が可能です。退院後は日常生活の制限はなく、食事制限も厳しいものはありません。
術後は外来で定期的な検査(CTや血液検査など)を行い、原則5年間通院して頂きます。また、かかりつけ医と密に連携をとり情報提供しながら共同で診療しております。

術後補助化学療法(抗がん剤)

大腸がん治療ガイドラインに従い、切除手術のあとにがんの進行度に応じて術後補助化学療法を行っています。

臨床試験

当院の大腸がん治療は、大腸癌研究会から提唱されている大腸がん治療ガイドラインに沿って行っております。一方、がん専門医療施設としての責務から、治療方針が標準化されていない領域においては、新しい治療指針提唱のための全国規模の臨床試験へ参加しております。もし患者さんの病状がそのような臨床試験の対象となる場合は、試験への参加をお願いしています。臨床試験は実験的なものではなく、すでに確立した手術や化学療法の大腸がんに対する治療効果を検証するものです。臨床試験では手術の質のみならず、化学療法やフォローアップなども厳重に管理されており、患者さんのメリットになることも多いですので、是非ご協力をお願いいたします。

臨床臨床試験参加研究グループ;JCOG(日本臨床腫瘍研究グループ)、大腸癌研究会、京都大学外科