京都医療センター

耳鼻咽喉科・頭頸部外科



頭頸部ロボット手術

―経口的ロボット支援手術(TORS: Transoral Robotic Surgery)―

はじめに

手術用ロボットである「ダヴィンチ」は、泌尿器科・婦人科領域をはじめ多くの領域で低侵襲手術として、広まっていますが、2022年より咽喉頭がんに対しても保険適応が認められるようになりました。
咽喉頭がんのに対する手術の一つとして、経口的咽喉頭がんの切除はわが国では内視鏡下手術がこれまで広まっています。当院では、2009年以後300例ほどに経口的鏡視下手術を行ってきましたが、2022年の保険収載を機会に2023年4月に経口的ロボット支援手術(TORS: Transoral Robotic Surgery)の実施施設認定を得ました。

TORSの実際

TORSでは、手術用ロボットである「ダヴィンチ」のアーム・鉗子(手術器具)などを操作するコンソールと呼ばれるリモコンを扱う術者と患者の傍にいてのアームの位置など調節したり、鉗子(手術器具)などを挿入して術者をサポートする助手が協力して手術を行います。TORSでは他科の手術と比べ、かなり狭い術野での手術になるので特に助手のサポートが重要になります。
実際の手術では、全身麻酔がかかった状態で特殊な開口器で口を大きく開けた状態で、「ダヴィンチ」のカメラ1本とアーム2本を挿入します。この時に歯や口腔粘膜を傷つけないように慎重に行います。切除が始まると、切除する部位が少し変化するだけでもアームが干渉して鉗子の動きを妨げることがあるので、助手が術野を監視しつつアームの位置の微調整を行います。時には洗浄管や鉗子を用手で挿入・操作して手術をサポートします。癌を切除した後は、術後の疼痛軽減・術後出血予防の目的でフィブリン糊と生体吸収膜(PGAシート)で傷をカバーします(MCFP法)。なお、切除範囲が大きい場合などは気管切開を行って気道が狭くならないように数日慎重に経過をみます。

TORSの特徴(内視鏡手術と比較して)

画面の特徴:3次元の立体視が可能であること、極めて明瞭な画面として術野をとらえること、カメラはぶれ防止機能が付いており安定した視野が取れること

鉗子等操作の特徴:アームにも手振れ防止機能が付いており、安全性が高くなっていること、使用する電気メスも止血能力が高いこと、鉗子の先端に関節が付いているので手術器具の動ける範囲が立体的にひろがること
などの特徴があり、これらによって、より侵襲の少ない手術ができるようになります。ただし、高度な技術が必要となるため、専門の施設で専門的訓練を受けたものにしか術者の認定はされません。

術後

MCFP法を行った場合は4-7日間ほど経鼻栄養(鼻から管をとおして栄養を入れる)、小さな傷の場合は術後1日だけ口から食事・水分をとらないようにすると出血・疼痛悪化などをかなり抑えることができます。入院は1-2週間となります。

TORSの適応症例

もっともよい適応:中咽頭癌の径4㎝以下(Tis/T1/T2)、ただしリンパ節転移が同側のみで3個以下、かつ動きの制限がないこと
その他の適応:下咽頭癌、声門上癌 いずれもT2以下の一部
(*全身状態などその他の要因で手術適応外になることもあります)

主治医の先生方へ

上記症例でTORS希望される場合は、地域連携室を通じて、火曜日の「頭頸部ロボット手術」外来へ紹介いただくようお願いします。都合が合わない場合は金曜日「頭頸部がん専門外来」でも対応いたします。