診療内容
主に以下の疾患について取り扱っています。
頭頸部がん
口腔がん、咽頭がん、喉頭がん、鼻腔癌(上顎がんなど)、唾液腺がん、甲状腺がん など
口腔がん
口腔がんは舌がん・頬粘膜がん・口腔底がん・上歯肉がん・下歯肉がん・口蓋がんに分類されます。
当院では頭頸部外科医長が開発したがん切除部分にフィブリン糊と吸収性シートを被覆する方法を行い、低侵襲で疼痛のない手術を提供しており、本方法をこれまで学会・講演などの活動を通じて国内に広く普及させてきています。
また、術前に頸部リンパ節転移のない症例でも初期のがんをのぞいて積極的に頸部郭清(頸部リンパ節を取り除く)を行い、再発を極力おさえるとともに頸部郭清で引き起こされる可能性のある後遺症がないように、頸部の細かい神経を極力保存するとともに、血管・筋膜などの保存につとめ、QOLの保持+治療成績の向上に努めています。
進行がんにおいては下顎骨の再建・腹直筋による組織欠損の修復などをおこない、術後の食事摂取機能や言葉の発声機能を十分に温存できる手術をおこなっています。
放射線治療が必要な症例では毎週放射線科とのカンファレンスや症例ごとに連絡を取り合うなど、最適の治療をおこなえる体制を整え、放射線治療や手術前の口腔ケアや術後の義歯・プロテーゼ作成などは歯科・口腔外科と綿密な連絡をとりながらすすめており、院内の総力をあげて口腔がん治療をおこなっています。 侵襲の少ない予防的頸部郭清を組み合わせることで、放射線をあてる範囲を極力小さいものにして、放射線による後遺症がもっとも小さくなるように、またもっとも有効にがんに対して照射できるように工夫しています。
咽頭がん
咽頭がんは上咽頭がん・中咽頭がん・下咽頭がんに分類されます。
上咽頭がんは放射線+抗がん剤の治療と場合によっては頸部リンパ節の切除をおこなっています。
中咽頭がんは初期ないし一部の進行がんで、当院の頭頸部外科医長が開発したがん切除部分にフィブリン糊と吸収性シートを被覆する方法を行い、低侵襲で疼痛のない手術を提供しており、本方法をこれまで学会・講演などの活動を通じて国内に広く普及させてきています。
またある種のウイルス感染を認める場合は放射線化学療法が有効であるため、進行がんでも放射線化学療法をおこないます。
下咽頭がんは飲酒暦のある場合がおおく、特殊な光をだす内視鏡(NBI内視鏡)により最近ではごく初期のがん(表在がん)が発見されるようになり、当院では口の中からだけでがんを切除する経口的下咽頭癌切除を以前から行ってきた数少ない施設であり、1週間程度の入院ですむ本治療法を積極的におこなっています。また一部の浸潤がん(表在がんより進行したがん)でもこの手術を行い、侵襲の極力小さい・後遺症の少ない治療法を選択しています。進行下咽頭がんは予後が極めて悪いため、徹底的な治療を行い、外科・形成外科と合同で徹底的ながんの切除と遊離空腸による咽頭の再建を行い症例によってはさらに放射線治療をおこなって、治療成績の向上をはかっています。 この徹底的な治療を行うことによりかつては3割程度の下咽頭進行がんが6-7割の5年生存率と治療成績が非常に改善しています。
また、術前頸部リンパ節転移のない症例でもごく初期のがんをのぞいて積極的に頸部郭清(頸部リンパ節を取り除く)を行い、再発を極力おさえるとともに頸部郭清で引き起こされる可能性のある後遺症がないように頸部の細かい神経を極力保存するとともに血管・筋膜などの保存につとめ、QOLの保持+治療成績の向上に努めています。
進行がんにおいては形成外科などとの合同で遊離組織移植による組織欠損の修復などをおこない、術後の食事摂取機能や言葉の発声機能を十分に温存できる手術をおこなっています。
放射線治療が必要な症例では毎週放射線科とのカンファレンスや症例ごとに連絡を取り合うなど最適の治療をおこなえる体制を整え、全例放射線や手術前に歯科口腔外科で抜歯などを含めた口腔ケアをおこない合併症などの軽減に努めるなど、院内の総力をあげて咽頭がん治療をおこなっています。
また、侵襲の少ない予防的頸部郭清を組み合わせることで、放射線をあてる範囲を極力小さいものにして、放射線による後遺症がもっとも小さくなるように、またもっとも有効にがんに対して照射できるように工夫しています。
喉頭がん
喉頭がんは声帯の周辺に発生し、声がかすれて見つかることが多いがんです。頸部のリンパ節に転移することもあります。当科では、主病巣(声帯)とリンパ節転移のそれぞれについて手術、放射線治療、抗がん剤から最適な治療法を選択することで個別化医療を実践しています。手術では、口の中からだけで行う経口的手術、喉頭の一部分だけ切除して音声機能を温存する喉頭部分切除、喉頭全摘(声を失う)、さらには広範切除・再建術までのすべての手術に対応しています。放射線治療では、放射線照射範囲の詳細な設定により照射後後遺症の軽減に努めています。
鼻・副鼻腔がん
鼻腔癌、副鼻腔がんとは鼻とその周囲の空洞に生じた悪性腫瘍を指します。鼻・副鼻腔がんの一般的な症状としては鼻詰まりや鼻血のほか、頬や上顎歯の痛み、頬の突出、ものが二重に見えることなどがあげられます。周囲を骨に囲まれている部位であり、症状が出難いため診断、治療が遅くなることも稀ではありません。がんとの確定は細胞診や生検といった腫瘍の一部を採取する方法で行います。
治療については、ほぼ扁平上皮癌一種類という他の頭頸部がんとは異なり、さまざまな種類のがんが生じる部位であることから、放射線治療が効きやすい(放射線感受性が高い)種類かどうかで治療方法を検討します。また、がんの進行度は、がん自体の大きさや、がんが周囲の組織へ入り込むこと(浸潤)がないかどうか、頸部のリンパ節やその他、遠くの臓器へ転移していないどうかで決まります。早期の腫瘍の場合は放射線治療か手術を行います。程度が進んだものほど治りが悪いため、病期の進んだもの(進行がん)の場合には、抗がん剤を併用しての放射線治療か拡大手術かでの治療を検討します。
当院は鼻・副鼻腔に隣接した脳の底の部分(頭蓋底)の切除と同時に、おなかや太ももの皮膚、脂肪の移植(遊離皮弁による再建)を行う頭蓋底手術を施行することができる全国でも限られた施設のうちの一つです。
唾液腺がん
唾液腺がんとは唾液を作る唾液腺(耳下腺、顎下腺、舌下腺)に生じた悪性腫瘍を指します。唾液腺がんも鼻・副鼻腔がんと同様にさまざまな種類の腫瘍を生じる部位です。唾液腺がんの一般的な症状は腫瘍部位隆起の自覚ですが、痛みや顔面神経麻痺(顔の一部や半分が動かなくなる)、頸部リンパ節腫大を伴うこともあります。がんとの確定は細胞診や生検といった腫瘍の一部を採取する方法で行います。
治療については、外科的に切除することが一般的です。手術では腫瘍周囲にいくらかの正常部分を付けて切除しますが、耳下腺はとくに顔を動かす顔面神経が内部に走っているため、手術のあとに顔の一部や半分が動かなくといった顔面神経麻痺が生じないかどうか留意する必要があります。小さながんでは切除後の部分をそのまま縫合しますが、大きくなったがんでは、切除と同時に、おなかや太ももの皮膚、脂肪の移植(遊離皮弁による再建)を行うことがあります。また腫瘍摘出の際に顔面神経を一緒に切断する必要があれば、大きな支障とならない他部位から神経を採取して移植すること(神経再建)を行います。当院は神経の再建を含む再建手術を伴う拡大手術も実施可能な施設です。
神経再建が難しい場合には、修正(静的再建)を行うことで、整容面を含めて日常生活の制約をなるべく少なくするよう努めています。
がんの進行度は、がん自体の大きさや、がんが周囲の組織へ入り込むこと(浸潤)がないかどうか、頸部のリンパ節やその他、遠くの臓器へ転移していないどうかで決まります。程度が進んだものほど治りが悪く、病期の進んだもの(進行がん)では手術に追加して、放射線療法や抗がん剤治療(化学療法)を行うことがあります。
甲状腺がん
甲状腺がんとの診断をされた患者さんは強いショックを受けられるでしょう。しかし、甲状腺がんの約90%が甲状腺乳頭がんであり、他の臓器のものとは異なり、比較的たちがよく、すぐに命を脅かすものではありません。
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甲状腺がんの種類について
甲状腺がんは乳頭癌、濾胞がん、髄様がん、未分化がん、悪性リンパ腫に大きく分類されます。それぞれの特性は違いますが、ほとんど(約90%)は比較的おとなしい性質で進行が緩やかです。治療の基本は手術です。 -
悪性腫瘍(がん)に対して行う手術
甲状腺、リンパ節の切除範囲に関しては腫瘍の大きさ、予想されるリンパ節転移の範囲によって決定されます。リンパ節とは、リンパ液を運んでいるリンパ管の関所のようなもので、甲状腺がんはリンパ節に高率に転移をおこします。リンパ節の切除範囲は甲状腺・気管周囲(中心部)をとるのか首の血管に沿った(外側部)まで切除するかに分けられます。術前検査にて進展度に応じた手術を選択します。 -
術後について
外来通院にて経過をみていきます。
悪性腫瘍手術後は定期的な検査が必要となります(エコー検査、CT検査など)。
また、切除範囲によっては甲状腺機能低下が出現するので、定期的な採血にて甲状腺ホルモンを測定し適切なホルモン補充療法を行います。
甲状腺疾患
甲状腺の病気には大きく甲状腺機能異常と甲状腺腫瘍の2つにわかれます。
腫瘍はさらに良性と悪性(がん)のものがあります。上記以外にも甲状腺に細菌が感染する病気などがあります。
甲状腺良性腫瘍
首のしこりなどで気がつき受診される方が多く、甲状腺の一部にしこり(結節)ができ、痛みもありません。原因に関しては未だにわかっていません。診断には超音波検査を行います。さらに腫瘍に細い針をさして腫瘍の細胞を吸い取って診断します。
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良性腫瘍の分類について
- 濾胞腺腫:腫瘍を取り囲む膜につつまれ甲状腺を押し広げるように大きくなる腫瘍
- 腺腫様甲状腺腫:真の腫瘍ではなく、しこりが多発して甲状腺全体が硬くなる病気
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良性腫瘍の治療について
基本的には経過観察を行いますが、場合によっては手術を行うことがあります。 -
手術の適応について
良性であっても下のような場合のときは手術治療をお勧めします。
- 悪性腫瘍を合併してるもの可能性があるもの(大きさが大きくなってきたもの)
- 機能性結節(甲状腺ホルモンを造る腫瘍)
- 圧迫症状、美容上に影響があるもの
- 胸の中まで甲状腺が大きくなっているもの(縦隔甲状腺腫)
手術の範囲は年齢や腫瘍の大きさなどにより決定されます。
甲状腺機能異常
●甲状腺ホルモンが増加する病気(甲状腺機能亢進症)
1. バセドウ病
科では主に手術治療を行っています。
手術適応は
- ①内服薬(抗甲状腺薬)で副作用がある方
- ②腫瘍を合併してる方
- ③治療で非常に治りにくい方(治療抵抗性)
- ④短期間での治療を希望される方
- ※手術に関しては、原則として甲状腺センターにて甲状腺ホルモンを正常化させたあとに手術を行います。
手術は甲状腺を一部残す甲状腺亜全摘術と甲状腺全摘術があります。
術式は年齢・性別(女性は妊娠前かなど)、バセドウ病の勢い、腫瘍の合併、合併症の有無など総合的に判断し決定します。
バセドウ病は若い女性に多い疾患です。当科では首の傷を綺麗にする工夫を行っています。
2. 無痛性甲状腺炎
3. 亜急性甲状腺炎
●甲状腺ホルモンが低下する病気(甲状腺機能低下症)
1. 慢性甲状腺炎(橋本病)
甲状腺感染症
1. 急性化膿性甲状腺炎
当科は頸部手術に精通し、悪性・良性の甲状腺腫瘍およびバセドウ病の手術を主に行っています。
また、甲状腺センター(内分泌内科)と連携して診察・治療を行います。
甲状腺疾患のその他の情報は、甲状腺センターのページをご覧ください。
耳疾患
浸出性中耳炎、慢性中耳炎、真珠腫性中耳炎、耳硬化症など
いずれも適切な治療が必要ですが、とくに慢性中耳炎や真珠腫、耳硬化症は手術が必要となります。
耳の手術は病巣を取り除くと同時に聴力の再建を必要とし、的確な手術操作を要するため顕微鏡下に行います。
入院が必要です。しかし、1~2 週間内の短期間の入院ですむように心がけております。
鼓膜穿孔のみの場合は、日帰り手術も可能です。
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小児の滲出性中耳炎
成長によってえられる自然な回復をできるだけ助け、妨げない治療をすすめています。 - そのほか顔面神経麻痺、突発性難聴などの治療もおこなっており、メニエール病、良性発作性頭位めまいなども併設のめまいセンターで取り扱っています。
鼻疾患
鼻中隔湾曲症、肥厚性鼻炎、アレルギー性鼻炎や、慢性副鼻腔炎など
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鼻中隔湾曲症、肥厚性鼻炎
手術が必要です。 -
アレルギー性鼻炎
まず対症療法ですが、薬でよくならないものにはレーザー手術を日帰り手術で行うことも出来ます。 -
慢性副鼻腔炎
いわゆる蓄膿です。昔は歯肉を切っての手術が必要でしたが、最近では内視鏡で鼻の中から行えるようになりました。マイクロデブリッダーなどの使用で患者さんの負担は軽くすみ、早期の退院も可能です。
鼻疾患
声帯ポリープ、声帯結節、ポリープ様声帯、声帯のう胞、肥厚性声帯炎、声帯麻痺など
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発声障害(声帯ポリープ、声帯結節、ポリープ様声帯、声帯のう胞、肥厚性声帯炎)
喉頭は声帯を有する器官であり、声帯の病変は即発声障害に結びつきます。この領域は当科が特に力をいれている分野のひとつです。 職業的音声使用者、たとえば歌手、役者、教師、アナウンサー、インストラクターなどに多く 声帯ポリープ、声帯結節、ポリープ様声帯、声帯のう胞、肥厚性声帯炎 などが見られます。これらの疾患に対しては直達鏡下の喉頭微細手術を行います。全身麻酔を要しますが短時間ですむ手術で、3‐4日の入院ですみます。ただし、術後 1 週間の発声禁止を要します。 -
声帯麻痺
原因として、肺がんや甲状腺癌、食道癌などの悪性疾患が潜んでいる場合があり注意を要します。治療は声帯にコラーゲンや脂肪を注入する方法や、頸部に小さな切開をおいて声帯を軟骨の外から移動させ声をよくする方法があります。いずれも負担の少ない短時間の手術です
咽頭疾患
1年に3、4回以上の扁桃腺炎を繰り返す習慣性扁桃腺炎やIgA腎症などの扁桃病巣感染症に対しても、扁桃摘出手術を行っています。睡眠時無呼吸症候群に対する口蓋垂軟口蓋形成術も行っています。
当院では術後疼痛がないよう手術の際に丁寧な扁桃腺剥離を行い、最小限の鎮痛剤で対応できます。