頭頸部がんに対する光免疫療法(頭頸部アルミノックス治療)
がん光免疫療法(アルミノックス治療)は、「切除不能な局所進行又は局所再発の頭頸部癌」に対して、がん細胞に特別に結合する色素を含む薬剤(アキャルックス®点滴静注:楽天メディカル社開発)とレーザー光照射を行う治療で、現在、国内で保険対象となっているのは頭頸部がんのみで、他の部位のがんは対象ではありません。この頭頸部がんの中で、切除手術ができず、標準治療としての放射線治療をすでに受けている場合が対象となります。頭頸部がんとは舌がんをはじめとする口腔がん、上中下咽頭がん、喉頭がん、上顎がんをはじめとする鼻・副鼻腔がん、耳下腺・顎下腺などに発生する唾液腺がんなど、首から上に発生するがんの総称です。
頭頸部アルミノックス治療の内容・方法
内容
がん細胞の表面にあらわれる特徴的なたんぱく質であるEGFR(上皮成長因子受容体)に結合する薬剤であるアキャルックス®は特異的な色素を有していて、ある波長の光(レーザー光)をあてると色素がこれに反応し、結合していた細胞膜を破壊してがん細胞を死滅させます。 なお、アキャルックス®を点滴して光過敏症になる可能性があるのでしばらくは光に当たらないようにしなければなりません。
方法
入院してアキャルックス®を2時間以上かけて点滴します。 以後は遮光された部屋で室内灯もつけない状態で過ごしていただき、手術室への往復の間も遮光しながら移動します(退院時まで)。
点滴の翌日に、手術室にて全身麻酔をかけた状態でがんに対してレーザー光を照射します。レーザー光は、がんの表面に光を当てる方法(フロンタルディフューザーを使用)とがんに特殊な針を突き刺してその中に光を照射するシリンドリカルディフューザーを挿入してがんの内部に照射する方法があります。
がんの部位や大きさによって術後の浮腫(むくみ)が起こることがあり、それによって呼吸困難を引き起こすと判断した場合は気管切開を行い気管に窓を開けることがあります。なお、レーザー光照射後すぐからがんの壊死が始まると同時に痛みも出現するので内服・注射等で痛みコントロールを行います。
治療後1週間で光過敏がないことを確認して退院しますが、退院時も長袖・長ズボン・タイツ・つばの広い帽子・マスク・サングラス・マフラーなど光を避ける服装で帰宅していただきます。
追加治療
この治療は最大4回まで行うことができ、がんの状況によっては、複数回の治療を行うほうが治療成績が良い場合があるため、2回・3回と治療をお勧めすることもあるかもしれません。
合併症
- 疼痛:術後より生じることがあり、鎮痛剤や場合によっては麻酔薬などでおさえます
- 出血:がんの周りの細胞が死滅することで血管に影響が及び出血することがあります
- 浮腫(むくみ):がん細胞の壊死などにより治療部分や周囲が張れることがあり、それにより呼吸困難(窒息)や嚥下困難が生じることがあります。窒息は命にかかわるので気管切開を行い浮腫みが引くまで、気道を確保することがあります。
- 組織壊死・瘻孔:がんが死滅した部分に穴が開いて潰瘍ができたり、骨が露出したり、穴が開いて皮膚と口腔咽頭がつながってしまい唾液などが外へ漏れてくる(瘻孔形成)ことなどがあります
- インフュージョンリアクション:アキャルックス®点滴後にまれに過敏症やアレルギー様症状をおこすことがあります。
- その他:光過敏症・皮膚障害などがあります
主治医の先生方へ
頭頸部アルミノックス治療の対象は頭頸部がんのみで他の領域・がん腫は適応ではありません。さらに「切除不能な局所進行又は局所再発の頭頸部がん」で、かつ化学放射線療法等の標準的な治療が可能な場合には化学放射線療法等を優先させなくてはいけません。手術ができる方や、放射線療法などの治療が行われていない場合は光免疫療法の対象にはなりません。さらに頸動脈などの大血管に浸潤がある場合も対象にはなりません。
・照射後再発・残存頭頸部がんで手術適応がなく、画像上、頸動脈浸潤を認めない症例において本治療を希望される患者様がおられましたら金曜日午後の「頭頸部光免疫療法」外来へご紹介いただきますようお願いします。
素材(画像・模式図)提供:楽天メディカル社ホームページ