医療の質向上における当院の取り組み
わが国では、患者さんやかかりつけ医の先生方は、自分が受診したい、患者さんに受診してもらいたい病院を自由に選ぶことができます。いろいろな病院の特徴や医療レベルが客観的にわかる指標があれば、患者さんにとっては大変有益なことです。質の高い医療を望むのは当然であり、どのようにして医療の質を評価するか、いろいろな工夫がされています。
医療の質とは一体何でしょうか。治療成績が良いことや医療の安全性はもちろん、患者さんの満足度も重要です。一般企業同様、医療機関においても品質管理は重要なミッションであることに変わりありません。ただ、医療はそれぞれ個別の患者さんを対象とするために客観的評価が難しいことも事実で、わかりやすくて統一的な評価基準が求められています。
QM委員会について
京都医療センターでは提供する医療の質が向上しているかどうかを調べるために、これまで色々な調査や活動をしてきました。QM(Quality Managementクオリティマネジメント:医療の質管理)委員会を2015年に発足、年次ごとに病院としての目標となる臨床評価指標を設定し、改善活動を重ねてきました。臨床評価指標としては、国立病院機構で設定した120の臨床評価指標(「臨床評価指標(QI指標)への取り組み」参照)を毎年測定、その中で当院において重点的に取り組むべき指標をQM委員会で選定、あるいは独自に質改善目標を設定し、多職種の構成員からなるワーキンググループで改善活動を行い、達成してきました。以下にそれらの重点臨床指標の一部を示します。
医療の質向上における当院の活動実績
- 脳神経外科手術における予防的抗菌薬投与の3日間以内中止率の改善(2016年)
- 入院および外来患者における総合満足度の改善(2017年)
- インスリン関連インシデント発生の抑制(2018年)
- 蘇生不要指示のガイドライン策定と臨床倫理コンサルテーションチームの導入(2019年)
- 急性期脳梗塞患者に対する早期リハビリテーション開始率の改善(2020年)
- 外来糖尿病患者に対する管理栄養士による栄養指導実施率(2021年)
「医療の質向上のための体制整備事業」への参画
これらの取り組みが評価され、2021年度には厚生労働省による「医療の質向上のための体制整備事業」におけるパイロット病院として国立病院機構から唯一選出されました(「医療の質向上のための体制整備事業への参画」参照)。この事業に参加し、クリティカルパスの重要性と診療の質を担保するために多職種チーム医療の必要性を改めて認識することとなり、大変有益でした。現在もPDCAサイクルを回しながら医療の質改善を図っています。
臨床評価指標による医療の質向上への地道な努力はこれからの医療機関においては必須の取り組みであると考えております。今後も継続的に取り組み、患者さん、地域の先生方に情報発信してまいりたいと存じます。
副院長・QM委員会委員長
白神幸太郎
医療クオリティマネージャー(日本医療機能評価機構認定第00240号)