脳神経外科診療部長 福田俊一医師の、頚動脈狭窄の進行と血液の流れの関係を解明した論文が、「Arteriosclerosis, Thrombosis, and Vascular Biology」に掲載されました。
頚動脈狭窄の進行と血液の流れの関係を解明
研究の背景
頚動脈は、首の左右にある太い血管で、脳に血液を送る重要な役割を担っています。
この血管が動脈硬化などで細くなる病気を「頚動脈狭窄症(けいどうみゃくきょうさくしょう)」といい、進行すると脳梗塞を引き起こす可能性があります。
頚動脈狭窄の発症には、血液の流れによる物理的な影響(血行力学的負荷)が関係していることが知られていますが、病気の進行にそのような影響がどう関わっているのかは、これまで詳しくわかっていませんでした。
研究の概要
本研究では、国立病院機構のネットワーク共同臨床研究として、頚動脈の3次元CT検査を受けたことがあり、定期的に頚動脈エコー検査を受けている患者さんにご協力いただきました。
過去のCT画像データをもとに、血液の流れを計算解析(CFD)し、エコー検査で狭窄が進行した方と進行しなかった方を比較して、血行力学的な違いを調べました。
研究の成果
その結果、狭窄の進行には、狭窄率(血管がどれだけ細くなっているか)によって異なるタイプの血液の流れの影響が関係していることが明らかになりました。
この知見は、比較的軽度な段階(狭窄率30~55%)でも、将来的な進行リスクを予測する手がかりとなる可能性があります。
また、同様のメカニズムが、心筋梗塞の原因となる冠動脈の狭窄など、他の動脈硬化性疾患にも当てはまると考えられ、今後の予防や治療方針の検討にもつながる成果です。
論文掲載情報
本研究成果は、アメリカ心臓協会(AHA)の医学雑誌「Arteriosclerosis, Thrombosis, and Vascular Biology」に掲載されました。
(Impact Factor 8.7 / 5-year Impact Factor 8.1)
Fukuda S, Watanabe A, Yoshimoto Y, Maruyama S, Yonemoto N, Fujiwara K, Fukuda M, Yasoda A; NHO Carotid CFD Study Group. Hemodynamic Environments for the Progression of Carotid Stenosis: The NHO Carotid CFD Study. Arterioscler Thromb Vasc Biol. 2025 Jun 12. doi: 10.1161/ATVBAHA.125.322928. Online ahead of print.