京都医療センター

脳神経外科

脳神経外科について

  • 脳卒中、脳腫瘍、頭部外傷、機能的脳外科、脊髄疾患など脳神経外科領域全般にわたって、患者さんの入院および外来加療を行っています。
  • 脳神経外科領域の疾患では、① 緊急に点滴や手術などの濃厚な治療を受けなければ生命にかかわる救急疾患 (例えば、くも膜下出血や急性期脳梗塞、重症頭部外傷など) がある一方で、② 病気は認められるものの、未だ症状は出現しておらず、予防的に手術を受けるかどうかを慎重に検討する必要がある疾患 (例えば、未破裂脳動脈瘤や無症候性頸動脈狭窄、良性脳腫瘍など) もあります。
  • 当科は、①に対しては、脳卒中や頭部外傷などの脳神経外科領域の救急疾患に24時間対応し、南京都の地域救急医療に貢献していると同時に、②における治療困難な脳神経領域の疾患に対して、綿密な計画を練った集学的な治療も行っています。
  • 個々の疾患や治療法などの診療トピックスについて詳しい情報をお知りになりたい方は、下段の該当する青の文字(リンク)をクリックしてご参照ください。

特色・取り組み

  • ① 救急医療

    急性期脳卒中

     脳卒中は、発症してからどれだけ早く治療が開始できるかが勝負となります。
     最近では、心臓に生じた血液の塊 (血栓) が脳血管に流れてきて急に詰まってしまうことで発症する心原性脳梗塞に対し、カテーテル治療によって血栓を取り除く機械的血栓回収術が非常に有効であることが判明しました。しかしながら、これらの治療は発症してから脳が完全に死んでしまうまでの一定の期間内に緊急に施行する必要があります。
    当院では、脳神経専門医が24時間院内に待機し、CT、MRI、血管撮影など診断に必要な諸検査や血栓溶解薬 (rt-PA) の点滴治療なども昼夜問わず24時間施行可能な体制となっています (日本脳卒中学会 一次脳卒中センターPSC認定施設)。さらに当院は、カテーテル治療による機械的血栓回収術も24時間施行可能な南京都では数少ない急性期脳卒中治療施設です。また当科は、どうすれば最も迅速に搬送されてからできるだけ早く血栓回収術を行うことができるかを検討するたもの他施設臨床研究を代表して行なっています。
     その他、くも膜下出血脳内出血などの頭蓋内出血も手術などの濃厚な緊急処置が必要な疾患です。当科は、これらの疾患に対しても、開頭手術 (脳動脈瘤クリッピング術や内視鏡的血腫除去術)やカテーテル治療 (脳動脈瘤コイル塞栓術) などを24時間対応で施行しています。

    重症頭部外傷

     当院は京都府内に6施設しかない三次救命救急センターであり、充実した救命救急施設です。救命救急医と脳神経外科医との連携により、緊急手術を要する重篤な頭蓋内出血を伴う頭部外傷症例に対しても、迅速な診断・処置に対応することが可能となっています。

    脳腫瘍

     悪性腫瘍増大した良性脳腫瘍による急性水頭症などによって急激に上下肢の麻痺や意識障害などを来すことがあります。これらの疾患に対しても、その道のエキスパートにより開頭腫瘍摘出術や内視鏡手術、放射線治療や化学療法などによる集学的治療を行なっています。

  • ② 予防的手術

     病気は認められるものの未だ症状は出現していない場合や、症状があっても軽微な場合、必ずしも手術などの濃厚な治療が必要とは限りません。 手術をすべきかどうかは、その疾患自体だけではなく、症状や年齢、全身状態、手術の難易度、さらには患者さんの性格や家族構成などを考慮して決めるべきであり、たとえ同じ疾患でも個々の患者さんによって方針が異なって来ます。外来で定期的な検査を受けながら経過を観ていくほうが適切な場合も多いのです。
     私たちは、患者さんご自身やご家族に充分に病気についての説明をし、相談をした上で、インフォームドコンセントをとり、その上で適切な最善の治療方針をとることが大切であると考えています。リスクの大きな疾患では、必ずしも良好な結果が待っているとは限りません。 手術を行った場合と経過を観ていく場合とで、どちらがより望ましい結果を得る可能性が高いかをご一緒に相談していきたいと考えております。そして、いったん手術を行うことが望ましいと判断された場合には、たとえ難易度の高い手術でも、様々な手術法を用いて積極的に治療を行っています。
     たとえば、未破裂脳動脈瘤を持つすべての患者さんが手術を受ける必要がある訳ではありません。脳動脈瘤はいったん破裂すると、くも膜下出血という重篤な疾患を引き起こしますが、すべての脳動脈瘤が破裂する訳ではなく、むしろ破裂しない動脈瘤がほとんどです。したがって、破裂する可能性が高そうな脳動脈瘤に対してだけ外科的治療 (開頭クリッピング術やカテーテルによるコイル塞栓術) を考慮することが大切です。
     脳動脈瘤は大きければ大きいほど破れやすく、また脳血管の部位や瘤の形などによっても破裂率が異なります。一般的に、5mm未満の小さな動脈瘤は破裂率が低いとされており、定期的な画像検査を受けながら経過観察をしていくことが望ましいことが多いです。逆に、20mmを超えるような大きな動脈瘤の場合、破裂リスクが非常に高く、年齢や全身状態が許せば手術を考慮することになります。しかしながら、大きな脳動脈瘤の手術は重篤な合併症を併発する可能性もあり、患者さんやご家族と医師がお互いに信頼関係を保ちつつ、慎重に検討することが必要です。当科には日本脳卒中の外科指導医が3名在籍しており、これは大学レベルの人数です。
     個々の脳動脈瘤がどのくらい破裂しやすいかを知るには、現在判明している情報だけでは不十分です。私たちは、血流が動脈瘤に与える影響に注目して、計算流体力学 (CFD) 解析という手法を用いて、他施設前向き臨床研究などによって症例を集め、新たな破裂リスクによる情報を探索しています。
     現在のところ、脳動脈瘤に効くお薬はありません。治療する場合は、開頭クリッピング術やカテーテルによるコイル塞栓術などの外科的な治療法しかないのが現状です。私たちは、動物実験や臨床研究によって、脳動脈瘤が大きくなることを抑制して破裂を予防する薬剤を研究しています。
     詳細については、下段の未破裂脳動脈瘤臨床研究青の文字リンクの項目をクリックしてご参照ください。
     顔面けいれん三叉神経痛も手術のタイミングが大切な疾患です。内服加療にでは効果がなかったり、副作用があるため継続できない症例では、神経ブロックが試されますが、再発したり十分な効果が得られなかった症例に対しては、最後の砦として開頭による神経減圧術が考慮されます。非常に辛い症状ですが、生命に危険が及ぶ疾患ではないだけに、手術適応に関しては十分なインフォームコンセントが大切です。当科には、これらの手術に十分な経験を持つ医師が在籍しています。

  • ③ 脳神経センター

     当院では、脳神経外科医、神経内科医、脳卒中専門医、脳血管内治療専門医、神経内視鏡技術認定医などから構成される脳神経センターを設置しています。 内科的治療や顕微鏡を用いた開頭手術をはじめとして、カテーテルによる血管内手術、さらには神経内視鏡手術や化学療法・放射線治療といった多様な治療法を選択することで、様々な脳神経疾患の分野に対して包括的に対応できるようになりました。脳神経内科と外科の風通しが良いことが特徴です。
     週1回施行される脳神経センター合同カンファレンスでは、これら専門医に加えて、看護師や薬剤師、栄養士、リハビリテーション専門師、音楽療法士なども参加し、脳神経センターに入院中のすべての患者さんについて検討を行い、個々の症例に最も適した診断や治療方針を定めています。
     さらに当センターでは、他科と連携して治療の自由度を高めたり、情報を交換することで診断の精度を高めたりすることに努めています。たとえば、頭蓋底部の腫瘍に対して、頭頚部外科、脳神経外科、形成外科などが協力して行っている根治術の症例数は全国でも有数のものです。

  • ④ 地域との連携

     地域医療施設を受診した濃厚な救急処置を要する脳神経疾患に対し直接専門医と相談が可能なように、脳卒中当直医が24時間体制で「脳卒中ホットライン」に対応しています。また、地域連携室を介した紹介症例も積極的に受け入れています。
     早期からのリハビリが大切である脳卒中に対しては、脳卒中地域連携パスを導入しており、地域医療施設と連携して、急性期病院から回復期病院を経て自宅に帰れるよう努めています。