脳神経外科診療部長 福田俊一医師の、脳動脈瘤の増大メカニズムが大きさで異なることを発見した論文が、「Journal of Cerebral Blood Flow and Metabolism」に掲載されました。
動脈瘤の増大メカニズムが大きさで異なることを発見
研究の背景
脳動脈瘤(のうどうみゃくりゅう)は、脳の血管にできるこぶのようなふくらみです。
破裂するとくも膜下出血を引き起こし、命に関わる重大な病気です。
動脈瘤は、大きくなるほど破裂のリスクが高くなるため、増大しやすい動脈瘤を見分けることがとても重要です。
動脈瘤の成長や破裂には、血液の流れによる力(血行力学的負荷)が影響していると考えられていますが、どのような血流環境で成長していくのかは、これまで詳しくわかっていませんでした。
研究の概要
本研究では、未破裂脳動脈瘤の患者さんにご協力いただき、造影CT検査のデータをもとに、血液の流れを計算流体力学(CFD)解析しました。
そのうえで、一定期間のうちに動脈瘤が大きくなったケースと、大きさに変化がなかったケースを比較し、それぞれの血行力学的な特徴を調べました。
研究の成果
解析の結果、動脈瘤の大きさによって、増大に関わる血液の流れの影響が下記のように異なることが分かりました。
- 4mm未満の小さな動脈瘤では、発生時と似た血流環境のもとで増大している
- 4mm以上の動脈瘤では、破裂に近いような血流の乱れが見られ、危険性が高まっている可能性がある
つまり、動脈瘤の「増大メカニズム」は大きさによって異なり、小さな瘤の増大は動脈瘤の発生の延長線上にあり、大きな瘤は破裂に近づくかたちで進行していると考えられます。
従来、5mm以上の脳動脈瘤は破裂しやすいことがわかっていましたが、今回得られた結果がその原因のひとつであると考えられます。
このことから、今後の経過観察や治療の判断において、「大きさに応じたリスク評価」がますます重要になると期待されます。
論文掲載情報
本研究成果は、「Journal of Cerebral Blood Flow and Metabolism」に掲載されました。
(Impact Factor 6.3 / 5-year Impact Factor 6.3)
Fukuda S, Shimogonya Y, Watanabe A, Yonemoto N, Fukuda M, Yasoda A; NHO CFD ABO Study Group. Two possible hemodynamic mechanisms underlying the growth of cerebral aneurysms depending on their size: the NHO CFD ABO Study. J Cereb Blood Flow Metab. 2025 Mar 13. doi: 10.1177/0271678X251325972. Online ahead of print.