当センターについて
1-(1). | WHO糖尿病協力センターの歩み |
(2). | 足病変(フットケア)専門外来、フットウェア外来、フットセンター外来 |
2. | 国際医療協力 |
1-(1). WHO糖尿病協力センターの歩み
1961年、京都医療センター(旧国立京都病院)に糖尿病専門外来が開設され、1965年には、厚生省から糖尿病センターとしての認定を受けました。その後、長年にわたる糖尿病診療とその教育実績が評価され、1988年には世界保健機関(WHO)によって「糖尿病治療と教育のためのWHO協力施設」として指定されました。
(初代センター長:赤澤 好温)
当時のWHO糖尿病協力センターのミッションは、
- 国レベルにおける糖尿病予防とコントロールの推進
- プライマリーケアレベルにおける糖尿病コントロールプログラムの開発
- WHOによる地域または国際的な教育プログラム推進への協力
でした。
河野 茂夫 現WHO糖尿病協力センター長
京都医療センター
1988年当時は、アジア西太平洋地域に存在するWHO糖尿病協力センターは、Paul Zimmet教授が率いるオーストラリアの糖尿病センターと、赤澤センター長が率いる京都医療センターの2施設しか存在しませんでした。
以降、アジア西太平洋地域における糖尿病ケアの進歩、発展に貢献することがWHO糖尿病協力センターの使命であると考え、活動を続けてきました。(2代センター長:葛谷 英嗣(1997-2007)、3代センター長:河野 茂夫(2007-現在)
1-(2). 足病変(フットケア)専門外来、フットウェア外来、フットセンター外来
2000年1月、足専門外来である、『糖尿病フットケア外来』を開設しました。
2000年6月から米国足病医(DPM)の資格を有する日本人スタッフ(泉 有紀・・・2000年5月~2002年3月まで特別臨床研究員として所属。2003年7月~2019年9月は月1回程度。足研究のために臨時雇用)が足病変研究チームに加わりました。(注:尚、患者さまの足の診察はしておりません。)
2002年からオーストリア人の整形外科靴マイスター(Eduard Herbst)がアドバイザーとして加わり、日本人義肢装具士(大井 雅之)が靴装具を作成する『フットウェア外来』を開設しました。
フットウェア外来のスタッフ
そして現在では、糖尿病専門医がゲートキーパーを務め、皮膚科医、血管外科医、形成外科医、整形外科医が難治症例に対し常時診療を行えるシステムを構築しています。
糖尿病足病変だけでなく、さまざまな足のトラブルをもつ多くの患者さまが外来を訪れるようになり、当院では新たに3つ目の足専門外来として、『フットセンター外来』を開設しました。
この外来では、足に関係する複数診療科(糖尿病科、皮膚科、血管外科、形成外科、整形外科、循環器内科)による包括的な対応が可能となり、現在では、糖尿病足病変を患った患者さんのみならず、末梢血管障害や整形外科的疾患など、糖尿病以外で足に問題を抱える患者さんの診療も行っています。
私たちの施設では、欧米から専門家を数多く招き、欧米式のフットケアを導入した結果、糖尿病足病変の発症、再発率の低下、入院患者の在院日数の減少、切断率の低下など、非常に良好な成果を得ています。
アジア西太平洋地域の医師や看護師を招き、これらの外来と病棟で糖尿病足病変診療について実習指導しています。(詳細後記)
2. 国際医療協力
1988年、当院の糖尿病センターがWHO糖尿病協力センターに指定されて以来、これまでアジア西太平洋地域の開発途上国の医療従事者に対し、指導・教育に努めてきました。
開発途上国における糖尿病とその予防をテーマに、葛谷英嗣(元京都医療センター院長)のもと、国際医療協力研究プロジェクトを立ち上げ、ベトナム、ハノイにある国立内分泌病院を研究協力施設としてベトナムにおける糖尿病に関する疫学調査を行いました。その結果、2000年代前半のハノイにおける糖尿病の有病率は8%と非常に高く、半数以上の糖尿病患者が初診時すでに糖尿病性神経障害を有しているという、私たちの想像をはるかに超えた結果が明らかになりました。
そして2004年からは、現地のベトナム人医師からの要望とWHOからの要請で、ベトナム人医師や看護師を教育し、下肢切断を削減することを目的としたベトナムフットケア・プロジェクトを発足させました。
2004年11月、複数の専門家で構成されたフットケアチームをベトナムに派遣しました。ベトナム人医師と看護師を対象に、糖尿病足病変のケアと予防に関する第1回のセミナーを開催しました。このチームには、京都医療センターチームから、河野茂夫(現WHO糖尿病協力センター長)、Eduard Herbst(整形外科靴マイスター)、大井雅之(義肢装具士)、泉有紀(米国足病医)、ハーバード大学からベトナム系アメリカ人ポダイアトリストのThanh L Dinh, DPMが参加しました。
第1回ベトナムフットケアセミナー(2004年・ハノイ)
以来、私たちは定期的にベトナムを訪れ、年に1回のフットケアトレーニングセミナーを開催するとともに、ベトナム人医師や看護師を京都医療センターに受け入れ、より包括的なトレーニングを行っています。そして、ベトナム施設が抱える、より困難な症例に対しては、インターネットを通じてコンサルテーションを行っています。
こうした努力が実を結び、結果、ハノイ国立内分泌病院において、2004年には5割を超えていた下肢切断率は、低下傾向を示しています。
2006年には、アジア西太平洋地域における糖尿病とその合併症に関する国際シンポジウムを京都で開催し、アジア西太平洋地域の7カ国(インド、マレーシア、日本、ベトナム、タイ、インドネシア、トンガ)の代表者、Andrew J.M. Boulton教授(イギリス、マンチェスター大学)、Dr.Gauden Galea(WHO西太平洋地域事務局、非感染症部門地域アドバイザー)、工藤宏一郎医師(国際医療センター)らが京都医療センタースタッフとともに出席しました。糖尿病に関するさまざまなトピックについての議論がなされ、それぞれの国の代表者からは自国における糖尿病の実態について発表が行われました。会議を通じて、アジア西太平洋地域で糖尿病足病変と足切断が増加していることが明らかになりました。
KYOTO MEETING 2006
Prof.Andrew J.M. Boulton
Dr. Gauden Galea
Dr. Koichiro Kudo
そして、このシンポジウムの参加者が中心となり、アジア西太平洋地域における糖尿病足病変プロジェクトを発足させました。
2007年3月には、9カ国の代表(モンゴル、中国、フィリピン、ベトナム、インドネシア、タイ、マレーシア、インド、トンガ)、糖尿病足病変診療の専門科のLawrence B. Harkless教授(米国、テキサス)、Dr. Sharad Pendsey(インド、ナーグプル)、そして国際糖尿病財団の2名(Dr. Anil Kapur、Ms. Sanne Frost)を迎え、この新しいフットケアプロジェクトの第1回目の会議として『KYOTO FOOT MEETING 2007』を開催しました。
この会議では、アジア西太平洋地域における糖尿病足病変問題に対し、どのような協力体制を構築できるかについて、全出席者参加のディスカッションを行いました。
KYOTO FOOT MEETING 2007
Dr. Sharad Pendsey and Dr. Shigeo Kono
Prof. Lawrence B. Harkless
Dr. Anil Kapur and Ms. Sanne Frost
京都医療センターでは、2008年以降、このフットケアプロジェクトに参加している外国人医師や看護師を招き、フットケアの実践研修コースを開いています。2009年にはイギリス人ポダイアトリスト、Ms. Alethea VM Fosterがトレーニングコースの指導に来日、2010年には、Benjamin Lipsky教授(アメリカ、シアトル)とThomas Lyons, DPM(アメリカ、ボストン)がフィリピンの重症例に対し、指導しました。2011年には、B. Lipsky教授、2012年にはJan Apelqvist教授(スウェーデン)、2013年にはC. Caravaggi教授(イタリア)、M. McGill教授(オーストラリア)、2014年にはS. Morbach教授(ドイツ)、2015年にはG. Abbas先生(タンザニア)、2016年にはK. Van Acker先生(ベルギー)が来日し、指導しました。
毎年、アジア西太平洋地域の医師や看護師とともに国際的な専門家を招き、KYOTO FOOT MEETINGを開催しています。本センターは、これらのプロジェクトの基幹施設として、また、WHO協力施設としてアジア西太平洋地域における国際医療協力に貢献し続けています。
糖尿病足病変トレーニングコース
2008
2008
2009
2009
2010
2010
2012
2012
2013
2013
2015
2015
2016
2016
2017
2017