京都医療センター

形成外科

中足骨短縮症(足の趾が短い)
(中手骨短縮症(指が短い))

中足骨短縮症とは

下の写真・レントゲンのように、主に第Ⅳ趾(手における薬指)に生じます。

何らかの誘因による骨端線の早期閉鎖が原因とされ、その部分の骨が成長しない(右上図黄丸部分)ことにより、他の趾の成長に伴って、小学校高学年以降あたりで足趾の短縮が明らかになってきます。
機能的には問題にならないことが多いですが、外観上の変形を認めるため、整容的に改善を希望する患者様は治療対象となります。

一般的な治療方法

治療方法は手術です。
手術の方法としては骨移植法と仮骨延長法があります。
伝達麻酔という神経に麻酔をして行うことも可能ですし、全身麻酔も可能です。

骨移植法
延長したい骨の上の皮膚(足の甲)を切開し、骨切りをします。
骨切り部分を延長したい長さまで引き延ばし、腸骨など他の部分から骨のブロックを採取して、延長した部分のスペースに移植します。
長所としては一期的に骨延長が可能なため仮骨延長法に比較して、治療期間が短いことです。しかし短所として、骨採取の際に腰の皮膚を切開するため、外観を改善するための手術であるのに、短縮部以外に新たな傷跡ができてしまいます。また、延長量が大きい場合に周囲の靭帯や腱を一部切離する必要があります。
仮骨延長法(当科で行っている方法)

骨の創傷治癒機構を利用した、創外固定器を用いた骨の採取を必要としない治療方法です。
骨移植法と同様に延長したい骨上の皮膚(足の甲)を切開し、短縮した中足骨を切ります。
その後骨切りした骨の両側にピンを立てて創外固定器を装着します。

術後少しずつ骨折部の間隔を広げていくことで、延長しながらも、骨が形成されていきます。延長が早すぎると骨の形成が悪くなり、また、延長が遅すぎると延ばしている途中で骨がついてしまい、十分な延長が得られないため、治療者側の経験が必要です。
目標の長さまで骨延長し、形成された骨が十分な硬さに成熟するのを待ってから創外固定器・ピンを外します。
長所としては骨移植法のように骨採取の必要がないことで、短所としては治療期間が骨移植法に比較して長くなることです。

当科での取り組み(皮膚を切らない骨延長法)
- 経皮的骨切りによる仮骨延長法 -

当科の診療科長荒田は、ワイヤーで骨切りを行う経皮的骨切りを仮骨延長法に組み合わせた、皮膚切開を行わない治療法を開発し、国内外の様々な学会や論文で報告しています。

学会報告・論文

  • 経皮的骨きりによる手指仮骨延長術
    荒田順 第 52 回日本手の外科学会
  • 第 5 中手骨短縮症に対し背側切開を行わずに仮骨延長術を施行した一例
    荒田順 第 94 回日本形成外科学会関西支部学術集会
  • 中足骨短縮症に対して経皮的骨切り術による仮骨延長法を施行した 1 例
    荒田順 日形会誌.2005.06
  • Nonincisional osteotomy for gradual lengthening by callus distraction in the hand and foot
    Jun Arata Annals of Plastic Surgery Vol67:232-234 2011

従来の仮骨延長法では短縮した中足骨上に3、4cm 程度の皮膚切開をし、骨切りをするのが通常でしたが、この方法ではワイヤーにより骨に穴を開けることで骨切りを行うための皮膚切開は行わず、また骨切りの際のワイヤー刺入部も目立ちません。 足の甲の切開による瘢痕がないため、最終的な外観はこの方法が優れていると考えています。

治療の時期・一般的な治療スケジュール・写真

手術の時期としては議論があります。

  • 足の成長がある程度安定してからの手術の方が延長量を決定しやすい
  • 整容的な問題からできる限り早く治してあげたいが、延長中はスポーツなど運動に制限がかかるため、中学生・高校生では数か月の安静は難しい。

この 2 点を考慮して小学校 5.6 年生頃が最適と考えておりますが、治療時期については診察時に相談して決めていきます。

初診
レントゲン撮影、診察を行い、手術の説明を行い、手術を受けたいか判断してもらいます。術前の採血と手術・入院のオリエンテーションを受けてもらいます。
入院
手術前日に入院します。入院期間は 3 日から可能ですが、両足手術の場合、松葉杖が難しい場合などはもう少し長期入院が必要となります。
手術当日
手術で骨切り・創外固定器を装着し、手術終了します。
術後はしばらく松葉杖での歩行となります。
外来
術後4、5 日程度待ってから骨延長を開始します。自宅でスクリューを回して1日 2 回決まった量(およそ1㎜/日)だけ延長していきます。1~2週に 1 回程度受診していただき、レントゲンでできてきた骨の確認を行います。
1ヶ月程度で予定した長さまで延長ができたら、仮骨が成熟するまでそのままの状態で待機します。だいたい術後2〜3ヶ月で骨は成熟し延長器を外して、普通の歩行が可能となります。