京都医療センター

臨床研究センター

不整脈 研究グループ

主任研究員 赤尾昌治

循環器内科における日常診療に加えて、多くの臨床研究や、新しい薬剤や医療機器の治験をおこなっており、より有効性・安全性の高い医療を求めて積極的に研究活動を行っています。その一端をご紹介します。

伏見心房細動患者登録研究(Fushimi AF registry)

<登録用ホームページ(https://edmsweb16.eps.co.jp/edmsweb/002001/FAF/top.html )へリンク>

目的

心房細動は、社会の高齢化にともない患者数が年々増加しており、重症脳塞栓症の原因疾患としても重要な地位を占めています。各界の著名人が、心房細動から脳梗塞を起こされたことも大きく報道され、社会の注目も増してきました。本登録研究は、伏見医師会、医仁会武田総合病院と共同で、伏見区を中心とした京都南部地域における心房細動患者を可能なかぎり漏らさずに登録することを目指し、患者背景や治療の実態調査、予後追跡を行います。

背景

心房細動は高齢化社会が進むにつれ増加の一途をたどっており、国内の患者数は100万人に達する勢いで、いまやcommon diseaseといってよい疾患です。日常臨床でも遭遇する機会の多い疾患ですが、ひとたび脳塞栓を起こせば致命的、あるいは重度の脳機能障害を残すことも多いです。ここ数年間で、心房細動をめぐる大規模臨床試験の成果が次々に発表され、心房細動の管理方針は大きな変化を遂げました。またアブレーションの急速な普及で治療の選択肢も増えました。
脳塞栓予防には、抗凝固薬であるワーファリンがもっぱら用いられてきました。しかしながら、ワーファリンは出血合併症やコントロールの煩雑さから、敬遠されたり、忍容性がないと判断されるなど、適正に使用されているとは言い難いのが現状です。また、心房細動患者は患者数が多く、正確な治療の実態が把握されていないのが現状です。
本研究では伏見区を中心とする地域全体の心房細動患者について登録研究を行って、患者背景や治療の実態調査、予後追跡を行い、この地域の心房細動治療の現状を把握することを目指します。2011年に入って、ワーファリンに替わる新世代の抗凝固薬も続々と登場する予定で、その有効性や安全性も明らかにしていきたいと考えています。今回の登録研究によって、伏見区の脳塞栓患者をひとりでも減らすことを究極の目標としています。

登録基準

  1. 過去に心電図で心房細動が証明されていること
  2. 除外基準なし

心房細動に対して治療が行われているかどうかに関係なく、今まで一度でも見つかっていれば登録可能です。心房細動のかたは無症状のことも多く、偶然に見つかるケースも含めて全例を登録します。

伏見から全国に向けて新たなエビデンスを発信できるよう、皆様のご協力をお願いする次第です。

メタボリックシンドロームから心血管疾患を発症する機序、また既に存在する心血管疾患の進展にメタボリックシンドロームが及ぼす影響について、ユニークな視点から研究を展開しています。メタボリックシンドロームは内臓脂肪蓄積により脂肪細胞からの生理活性物質分泌異常を生じ、心血管合併症を惹起すると考えられていますが、その詳細な機序は未だ不明です。我々は血管や心臓の発生および機能維持に必須である血管内皮増殖因子(VEGF)の阻害因子である可溶性VEGF受容体2(sVEGFR-2)がメタボリックシンドロームにおいて有意に上昇していることを見出しました。血中sVEGFR-2レベルはBMI、中性脂肪、空腹時血糖と正の相関を示します。また炎症の指標であり心血管リスクの指標として注目されている高感度CRPと正の相関を、抗動脈硬化ホルモンとして注目されているアディポネクチンとは負の相関を示すことが判明しました。つまり、sVEGFR-2は新たな心血管リスクの指標候補として極めて有望であるといえます。現在、臨床応用を目指して、臨床研究、基礎研究の両面からその意義について精力的に研究を進めています。

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