外科

乳がん

はじめに

医学の進歩や生活環境の改善によって寿命が延びるとともに、さまざまながんにかかる可能性が高くなっています。ことに女性では、以前多かった胃がんや子宮がんに代わって、乳がんや大腸がんが増加しています。乳がんは 20 代から 80 歳以上の方まで、どの年齢層でも発症する病気です。最近では、特に 40 代で急上昇していますので、家庭でも社会でも重要な時期の女性に最も多く発生するがんといえます。乳がんは自分自身で見つけることができる唯一のがんですから、乳房の健康について関心を持つことが重要です。

“乳がん”とは、どんな病気ですか?

乳がんは、指をそろえた手のひらで乳房を撫でたり軽く押さえたときに、硬いシコリ ( 腫瘤 ) として触れます。稀には乳頭より分泌物が出たり乳頭が湿疹のようにただれたりすることもありますが、大多数は乳房のシコリとして乳がんが発見されます。しかし、乳房にシコリが触れたら全てが乳がんという訳ではなく、良性疾患 ( 良性腫瘍の線維腺腫や嚢胞、乳腺症、乳腺炎など ) の場合もシコリとして触れます。
シコリを見つけた場合には、それが乳がんなのか、それとも良性のものなのかを見極める必要がありますので、怖がられることなく、まずは乳腺外科を受診しましょう。

乳がんの診断

乳腺外科を受診されますと、乳房の診察や検査として以下のような診断方法があり、手順を踏んで慎重かつ迅速に診断していきます。

  1. 視触診
    専門医が患者さんのお話を聞いた後に、乳房全域をくまなく調べる最も基本的な診断法です。
  2. 超音波検査
    乳房の皮膚面より超音波をあてて乳房内の変化を調べます。 X 線ではありませんので被爆の心配はなく、妊娠中でも検査が可能です。
  3. マンモグラフィー
    低電圧の X 線をあてて乳房像を描出する方法で、京都市の乳がん検診でも 40 歳以上の女性に併用されています。
  4. 針生検
    シコリに細い針を刺して細胞を採取したり ( 細胞診 ) 、やや太い針を刺して組織を採取して ( 組織診 ) 、顕微鏡下にがんがあるかどうかを調べます ( 病理診断 ) 。
  5. 生検
    シコリが触れても乳がんの診断が判定困難な場合には、局所麻酔下にシコリを切除して、顕微鏡下にがんがあるかどうかを調べます。

どこまでの検査が必要であるのかは、外来診察時に担当医師と十分に相談しましょう。

乳がんの治療

我が国では、以前は「乳がんと診断された場合はまず手術が必要であり、乳がんは外科単独で全てを治療する」という風潮がありました。もちろん手術をして乳がんを取り去ることは治療法の大きな柱であることに間違いはありません。しかし、乳がんに対する治療として、乳腺外科、放射線科、腫瘍内科、臨床病理部、看護部などが協力して取り組む必要がありますので、当院ではこうしたチーム医療を行っています。
主な治療として1)手術、2)内分泌療法 ( ホルモン剤 ) 、3)化学療法 ( 抗がん剤 ) 、4)放射線治療、5)免疫療法などが挙げられます。どのような治療法が有効なのか、どの治療を優先して行うべきか、定期的に「乳がん診療カンファレンス」を行っています。
2004 年と 2005 年に日本乳がん学会より『乳がん診療ガイドライン』が発刊されましたので、原則としてそれに準じて治療計画を立てていますが、個々の患者さんにとって最適の治療法を判断するように心がけています。
治療を行うに当たっては当然のことですが、患者さんご本人およびご家族の方に十分説明をして同意を得るようにしています。些細なことでも分からない事があれば、何なりと気兼ねなくお尋ねください。

乳がんの手術

乳がんを治療せずに放置しておきますと、がん細胞が身体の遠くへ ( 例えば骨・肺・肝臓など ) 転移します。乳がんの手術の目的は、転移を起こさないように乳がん本体を切除することにあります。以前はできるだけ大きく切除する方が治癒する確率が高いと考えられていましたが、いたずらに大きな手術をしても予後の向上には貢献しない事が判ってきました。
乳がんの手術の基本は、乳がんの切除と脇の下 ( 腋窩 ) のリンパ節を切除することで、乳房とその近傍の局所を制御することにあります。乳がんを切除する方法として、1,乳房切除術 ( 乳腺を全て切除 ) と 2,乳房温存手術 ( 乳腺の部分切除 ) がありますが、最近では多くの症例で乳房が温存されるようになってきています。また、腋窩のリンパ節を切除する範囲も縮小されてきていますので、早期の症例ではリンパ節のサンプリング程度にとどめられます。
乳がん手術の縮小化に伴って、手術の根治性を損なうこととなく、術後の整容性の向上が図られるようになりました。

乳房温存療法

乳がんの手術として、乳房全体を切除せずに乳がんの部分とその周囲のみを切除して、術後に放射線治療を行う方法 ( 乳房温存療法 ) が開始されて約 20 年が経過しますが、最近では多くの症例で乳房が温存されるようになってきました。

乳房温存療法には、温存した乳房の美しさをどの程度に保つか ( 整容性 ) 、温存した乳房からの再発を如何に定率に抑えるか ( 根治性 ) 、の 2 つの問題点があります。この問題点を解決するには、外科 ( 切除範囲の的確な判断 ) と、臨床病理部 ( がんの拡がりの詳細な診断 ) と、放射線科 ( 過不足のない的確な照射計画 ) の共同作業が不可欠です。
当院では、個々の患者さんについて術前・術後カンファレンスを定期的に行い、綿密な情報交換をしています。
乳房を温存することが可能な場合、乳房温存療法を行うか、乳房を切除するかは、患者さんご自身に決めていただいています。年齢を問わず、乳房は女性にとって大切なものですから、乳房温存療法に関しては担当医に何なりとご相談ください。

乳がんの術後補助療法

乳がんの手術を受けられると、乳房を全部切除した場合はもちろんのこと、乳房温存療法を行った場合でも、乳房の近くにはがん細胞はほぼ完全に無くなります。しかし、手術を受けられた時点で、精密検査でも発見できないような微小ながん組織が、すでに骨・肺・肝臓など遠くへ転移している場合があり、特に脇の下 ( 腋窩 ) のリンパ節に転移が見られた場合には、その危険性は低くありません。ですから手術が治療の全てではなく、術後に薬を用いた全身的な治療で「存在しているかもしれない微小ながんを叩く」必要があり、これを術後補助療法といいます。
代表的な治療法として、1)内分泌療法 ( ホルモン剤 ) と2)化学療法 ( 抗がん剤 ) があります。手術で切除したがん組織の病理検査を行い、女性ホルモンに影響されやすいタイプ ( ホルモンレセプター陽性 ) と判明した場合には、ホルモン療法剤を使用します。また、欧米で行われた臨床比較試験では、種々の抗がん剤の点滴注射による有用性が実証されてきています。リンパ節への転移やがんの広範囲な浸潤などが見られて、再発する危険性が低くないと考えられる場合には、抗がん剤の点滴注射を行うことを患者さんご本人とご相談しています。ホルモン剤、抗がん剤ともに少なからず副作用がありますので、術後補助療法を行う前には担当医と十分に話し合いましょう。

乳がんの予後

乳がんの手術を受けられますと、術後どのように過ごせるのかが、とても心配なことと思います。個々の乳がん患者さんの進行度や悪性度は異なりますので、術後の経過 ( 予後 ) を予測することは極めて困難です。

一般的には、乳がんの進行度を示す方法として病期 (Stage) 分類が行われています。 腫瘤の大きさ (T) と、腋窩のリンパ節転移の程度 (N) と、身体の遠い部位への転移の有無 (M) の、 T N M の組み合わせによって 0 期・I 期・II 期・III 期・IV期に分けられます。 0 期 ( 非浸潤性乳がん:乳管や小葉にとどまっている乳がん) の場合は、手術でほぼ 100 %治ります。また早期乳がんの I 期の場合には、 10 年生存率が約 90 %となります。

がんの深達度(T) リンパ節転移(N) 他臓器への転移(M)
0期 Tis
明らかなしこりを認めない
N0 転移なし M0 転移なし
Ⅰ期 T1
しこり2cm以下
N0 転移なし M0 転移なし
Ⅱa期 T1~T2
しこり5cm以下
N0~N1 M0 転移なし
Ⅱb期 T2~T3
しこり2.1~5cm、もしくは5.1cm以上
N0~N1 M0 転移なし
Ⅲa期 T3
しこり5.1cm以上
N0~N1 M0 転移なし
Ⅲb期 すべてのT N0~N1 M0 転移なし
Ⅲc期 すべてのT N1 転移あり M0 転移なし
Ⅳ期 すべてのT すべてのN 転移あり M1 転移あり

各病期によって術後の治療法が異なりますし、治癒する確率も異なってきます。しかし、乳がん治療として、手術だけでなく手術以外の内分泌療法・化学療法・放射線療法・免疫療法などが日々進歩してきていますので、乳がん術後の予後に悲観的になられる必要はなく、積極的に治療を受けられることが大切です。

電話番号0756419161 救命救急|24時間365日対応

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