国立病院総合医学会





フットセンター外来

フットセンター外来の受診を希望される皆様へ糖尿病と足についてのよくある質問糖尿病足病変について

糖尿病と足についてのよくある質問

Q1. 糖尿病と足には、どんな関係があるのですか?
Q2. 糖尿病になると、どんな足の問題が起こりますか?
Q3. 糖尿病によって起こるものではないけれども、注意が必要な足の問題とは?
Q4. 糖尿病になると、足に傷ができやすくなるのはなぜですか?
Q5. 糖尿病になると、足の傷がなおりにくくなるのはなぜですか?
Q6. 足に神経障害があるかどうかは、どのようにして分かりますか?
Q7. 足に血流障害があるかどうかは、どのようにして分かりますか?
Q8. どれくらいの割合の糖尿病患者さまに、足に問題が起こるのですか?
Q9. 足に問題を起こしやすい、糖尿病患者さんの特徴は?
Q10. 血糖は足にどんな影響があるのですか?
Q11. 糖尿病によって起こる足の問題は、予防することができますか?

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Q1. 糖尿病と足にはどんな関係があるのですか?
A1. 糖尿病になると、その合併症として、しびれや痛みや感覚が鈍くなる神経障害と、足への血の流れが悪くなる末梢血流障害が起こりやすくなります。神経障害が進行してしまうと、感覚が鈍くなるため小さな傷をつくりやすく、また小さな傷に気付かずに大きな傷になって初めて気付くということがあります。また、足への血の流れが悪いと、傷ができても治りにくかったり、まったく治らなかったり、ひどい場合では、傷の周りが黒くなったりしてしまう事もあります。
これらの糖尿病による合併症は、全身に起こるものですが、足は身体の中心から一番遠く、普段は靴や靴下などを履いていて目につきにくいため、他の身体の部位に比べて足に大きな問題が起こりやすくなるといわれています。

Q2. 糖尿病になると、どんな足の問題が起こりますか?
A2. 糖尿病患者さんにとって、もっとも怖い足の問題は「足潰瘍(あしかいよう)」と、「足壊疽(あしえそ)」です。「足かいよう」は、足に傷ができて、皮膚が掘れた状態が1週間以上続いた状態を指します。足に細菌が感染し、腫れのために血液の流れが遮断されたり、血管が詰まって皮膚への血液の流れが阻害されてしまうと、正常な皮膚を保つことができなくなり、皮膚やその下の組織が黒く、死んでしまいます。そのような状態を「足壊疽」と言います。 糖尿病になって、神経障害や血流障害を合併すると、これらのような足の問題が起こりやすくなり、結果、足の一部や膝や下腿から下を切断しなければならない事態を招いてしまいます。

Q3. 糖尿病によって起こるものではないけれども、注意が必要な足の問題とは?
A3. 外反母趾のように足に出っ張りができたり、足の指が曲がってきたりといった足の変形は、糖尿病患者さんでなくともよくみられる足の問題です。また、足裏の皮膚がポロポロとはがれ落ちる水虫や、分厚い爪、足の裏の「たこ」なども、糖尿病の有無に関わらず、よくみられる足の問題です。これらの問題は、直接、糖尿病によって引き起こされる問題ではありませんが、糖尿病によって起こる神経障害や血流障害と合わさることで、さらに傷をできやすくしたり、バイ菌が侵入する入口となったりするため、「足かいよう」や「足えそ」の危険をさらに高めてしまいます。糖尿病でなければ、これらの問題に対してはそれほど神経質にならなくても良いかもしれませんが、糖尿病で神経障害や血流障害がある場合は、足かいようや足えそを引き起こす原因となりやすいため、積極的な治療をお勧めしています。

Q4. 糖尿病になると、足に傷ができやすくなるのはなぜですか?
A4. 糖尿病になり、かなり年月が経つと、さまざまな変化が足に起こります。第一に、足の感覚がにぶくなったり、なくなったりするという神経障害があります。
神経障害が起こると、足の裏に異物がついていても長い間、気付かなかったり、タコや魚の目があっても痛みを感じないため、普段どおり歩き続けてしまい、皮膚が破れる限界まで放置してしまうというようなことが起こります。
また、この神経障害によって、足の中にある小さな筋肉がやせ細り、足の指が曲がってきたり、足全体の形が変わったりすることで、足の出っ張った部分に、靴や床からの刺激が集中し、傷をできやすくしてしまいます。このようなことから、糖尿病患者さんの足は傷ができやすく、傷ができても気づくまでに時間がかかりやすくなるのです。

Q5. 糖尿病になると、足の傷が治りにくくなるのはなぜですか?
A5. 私たちの血液には、傷を治すために必要な物質や細菌感染と戦うための薬を届け、傷から老廃物を取り除くという重要な役割があります。糖尿病でない人と比べて糖尿病患者さんでは、膝から下の血管が詰まりやすく、足への血の流れが悪くなりやすいことが知られています。そのような患者さんでは、足に傷ができても、その傷を治すために必要な血液が足りず、傷が治らないばかりか、傷の周りの健康な皮膚までもが死んでしまう壊死(えし)状態になることがあります。

また、血液の中には、ばい菌と戦う細胞も含まれていますが、高血糖状態にあると、このばい菌と戦う力が弱まるため、傷が膿み(うみ)やすく(感染しやすく)なってしまいます。感染を起こした傷は、感染のない傷と比べて、治療に時間がかかります。

そして、傷を治すためには、傷の安静が欠かせません。しかし、足にできた傷の場合、日常生活を送るため、立ったり、歩いたりという動作が必要となり、他の身体の部分に比べて安静にさせにくいことが知られています。このように、糖尿病患者さんにできた足の傷は、足の血の巡りが悪くなりやすいこと、高血糖によって感染が起こりやすくなること、安静にさせにくいことなどから、治りにくいと言われています。

Q6. 足に神経障害があるかどうかは、どのようにして分かりますか?
A6. 両足にピリピリとした痛みや、しびれを感じる場合は糖尿病による神経障害が疑われますが、同じような症状を起こさせる別の病気もあるため、このような痛みや違和感を感じたら、まずは主治医に相談して別の病気が隠れていないかを確認してもらいましょう。また、神経障害があっても、このような痛みを感じない人も多く、特に足の感覚がうすれてきたり、なくなってしまったというような場合では、自分で気づくことは難しいでしょう。

足に神経障害があるかどうかは、感覚や反射を診る器具で検査をしたり、神経伝導速度という検査をしたりすることができますので、糖尿病になって10年以上がたっている患者さんの場合、特に足に違和感がなくとも一度は足のチェックをしてもらうことをお勧めします。

神経障害があると診断された場合、痛みなどの症状に対してはお薬を処方することもあります。しかしお薬よりももっと大切なことは、こまめに自分で自分の足をチェックすること、履物に注意すること、足のスキンケア(フットケア)を行うことなど、足に傷をつくらないための予防を徹底することです。

Q7. 足に血流障害があるかどうかは、どのようにして分かりますか?
A7. 歩いたり、運動したりするためには、通常よりも多くの血液を必要とします。そのため、安静にしている時は大丈夫でも、一定の距離を歩くと、血液の不足からふくらはぎが痛くなったり痺れたりして、少し休むとまた歩き出せるものの、また一定の距離を歩くと痛みが出るという間欠性跛行(かんけつせいはこう)という症状がでることがあります。このような状態から、さらに足への血の流れが悪くなると、横になった状態では足が痛み、足を椅子やベッドの端から下に垂らすと痛みが治まるというような状態にまでなることがあります。このような症状がある患者さんは、すぐに主治医の先生に相談してください。また、足がいつも冷たい、なかなか治らない傷があるというような場合にも、足の血流障害が疑われます。

しかしながら、糖尿病患者さんの場合、神経障害によってこれらの症状を感じることができないだけで、無症状であるにも関わらず血流障害が進行している人も多くいます。そのため、これらの症状がないからといっても安心できません。足の血流障害の有無は、足首や足の指の血圧を測る器械を使って簡単に検査することができます。糖尿病になって10年以上経ち、特にタバコを吸っている方、心筋梗塞や脳梗塞などを起こしたことがある方は、足の血の流れが悪くなっていないかを一度確認することをお勧めします。

血流障害があると診断された場合、その重症度によっては、薬や運動を勧められるだけの人から、血管を広げる手術、またはバイパスなどの専門的な治療を必要とする人もいます。また喫煙は血管に悪影響を及ぼすため、勇気を持って禁煙に臨みましょう。

Q8. どれくらいの割合の糖尿病患者さんに、足の問題が起こるのですか?
A8. 日本国内では、糖尿病患者さんの中でどれくらいの人が足に問題を起こしているのかという正確なデータはないのですが、概ね、1~2%程度と言われています。これは世界的には少ない数字といえますが、今後、日本でも糖尿病患者さんが増え、神経障害や血流障害を持った患者さんが増えていくであろうことを考えると、糖尿病によって足を失う患者さんも増えてゆくことが懸念されています。世界的には、地雷で足を失う人よりも、糖尿病で足を失う人の方が60倍も多く、20秒に1本の足が糖尿病によって切断されていると報告されています。糖尿病患者さんに起こる足の問題は、多くの国々で非常に深刻な問題として扱われています。

Q9. 足に問題を起こしやすい糖尿病患者さんの特徴は?
A9. 日本での足に問題を起こす患者さんの男女比は、7:3と男性に多く、糖尿病になって15年以上たってからの人に多いと報告されています。また、糖尿病であることに気付くのが遅れたり、知っていても放置していたような患者さんでは、長期にわたって糖尿病のコントロールが悪かったことが多いため、神経障害や血流障害などの合併症の進行も早く、足の問題も起こりやすいと言えるでしょう。また、足の問題は、小さな傷や水虫、ひび割れ、伸びすぎた爪など些細なことがきっかけとして起こることが多いため、神経障害や血流障害があるうえに、足に外反母趾などの変形や、タコ、水虫などがある人も、リスクが高いと言えます。その他にも、目が見えにくい、足に手が届かないという理由で、足の異常に気付きにくい人、ケアできない人、また気付いても、無関心で放置し、ケアを怠るような人も注意が必要です。

Q10. 血糖は足にどんな影響があるのですか?
A10. 血糖と足に関係はなさそうに思えますが、足を守るためにも血糖コントロールは非常に重要です。Q5. 糖尿病になると、足の傷がなおりにくくなるのはなぜですか?で紹介したように、高血糖状態では、私たちの身体は外からのばい菌と戦う力が弱くなり、傷が膿みやすく、感染をおこしやすくするため傷の治りを妨げます。また、高血糖状態が続くと糖尿病の合併症の進行も早まることが知られています。そして、余分な糖の副産物は足の関節に付着して関節を硬くし、足にかかる負担を大きくすることも知られています。そのため、足にリスクがある患者さんにとって、血糖コントロールは足を守るためにも非常に重要といえるでしょう。

Q11. 糖尿病によって起こる足の問題は、予防することができますか?
A11. 糖尿病の世界的なガイドラインにおいて、医療従事者による足の定期的なチェックやフットケア、また患者さん自身が行うセルフケア、そしてさまざまな専門家の英知を集結した治療によって、糖尿病患者さんに起こる足切断の半分は、予防することができると述べています。実際に、これらの予防プログラムを取り入れた多くの施設では、足を切断する患者さんが減ったという報告もされています。

これらの予防策のなかで、もっとも重要なことは、患者さま自身がよりよい血糖コントロールと禁煙に努めること、そして足に関心を持ち、日ごろから足をよく観察してケアを行い、異変に気が付いたらたとえどんなに小さな傷であってもすぐに医療従事者に相談するという姿勢です。本ホームページ内の糖尿病患者さまのためのフットケア10カ条を参考にしていただき、フットケアを実践し、一生自分の足で歩き続けられるように努めましょう。